大気汚染・地球温暖化防止
最適運航とGHG排出量削減の両立を目指す「IBIS プロジェクト」
当社グループは、より高品質かつ環境負荷を抑えた安全運航を目指すべく、さまざまな取り組みを進めています。
2012年度から最適経済運航「IBIS(Innovative Bunker & Idle-time Saving)プロジェクト」を開始し、ビッグデータを活用した幅広い燃節活動を進めてきました。活動対象の拡大に沿って名称を「IBIS-TWO」、「IBIS TWO Plus」へと進化させ、特に2020年度からは燃節活動を通じてESGの“E”に貢献するべく、グループ会社の垣根を越えて最適経済運航を追求してきました。
2023年度からは「IBIS Three」と名称を変更し、最適経済運航とGHG排出量削減の追求により、企業価値と社会価値を同時に創出することを目指しています。本プロジェクトで担っている運航効率の改善は当社グループの掲げる脱炭素目標達成のために欠かせない要素です。現場の社員と陸上で働くオペレーターとのコミュニケーションや陸上からの遠隔支援などベストプラクティスの共有を組織的に進め、より高度な運航業務に挑戦していきます。
ロゴマークはプロジェクト名にもなっているIbis(コウノトリ)が青い地球を運んでいる様子から、GHG排出量削減によって青い地球を守ろうという思いを込めて当社でデザインしました。背景の二色の輪は、当社のトレードカラーである青と赤で無限大(∞)を表現し、継続的な燃料節減やGHG排出量削減の取り組みにより、青い地球を永久に残すことを重ねてイメージしたものです。
エネルギー転換への取り組み【LNG燃料・LNG燃料供給事業・ゼロエミッション燃料】
気候変動への取り組みの関連ページをご参照ください。
プロペラの推進効率の向上「MT-FAST」
波や風の抵抗が少なくなれば少ないほど、省エネ運航が可能となります。当社ではその実現に向けて、船体に取り付けることで抵抗を軽減させるさまざまな船体付加物を考え出しています。(株)MTIが常石造船(株)と共同開発した推進援助装置「MT-FAST」もそのひとつです。航海中の水面下では、プロペラの回転から生まれる旋回流により、推進力が損なわれる現象が起きてしまいますが、船体に翼をつけることで損失推進力の回収効果が実証され、約4~6%の省エネ効果が確認されました(特許取得済)。引き続き、回収効果の高い仕組みを研究していきます。
その他省エネ機器・船型改良
省エネ運航にあわせた船舶の船型改良工事
省エネ運航が一般的となってきたため、建造時に想定されていた航行速度より低速域で航行する傾向にあります。当社グループではバルバスバウ※1の改造や船体付加物「MT-FAST」の設置などにより、就航済みの船舶を修繕ドックで低速運航仕様に改良しています。
2014年6月の改良工事実施後、半年間にわたり実航海データを取得しビッグデータの性能解析を行った結果、推定値を上回る23%ものCO2削減効果を確認しました。併せてエンジンの運転状態など、本船のコンディションの検証も併せて行い、この改良工事が安全運航に影響を及ぼさないことも確認しています。
当社グループが短期間かつ効率的に運航条件に適した改造工事を検討する手法を確立した(特許取得済)ことで、当社グループの運航船舶に対してこの手法に基づく工事を進め、省エネ効果の向上を図っています。
- ※1バルバスバウ
本船の喫水線下の船首部分に取り付けられた、丸く突出したバルブ状の突起物。船が進む際、波を起こすことによって受ける抵抗を打ち消す効果がある
「泡」で省エネ「空気潤滑システム」搭載船
空気潤滑システムとは船底に空気を送り込むことによって泡を発生させ、海水との摩擦抵抗を減らす省エネ技術です。当社グループでは2010年に「ブロア(送風機)方式」による空気潤滑システムをモジュール船※3「YAMATO」と「YAMATAI」に搭載し、世界初の恒久的な運用を実現させました。2012年には同じく世界初の「主機掃気バイパス方式」による空気潤滑システムを開発し(関連特許取得済)、当社石炭運搬船「SOYO」に搭載しました。効果としては、ブロア方式で平均約6%のCO2排出量削減が確認され、主機掃気バイパス方式では約4~8%のCO2排出量削減が期待されています。
また新たな船種への展開として2014年5月竣工の自動車専用船「ARIES LEADER」 への搭載が行われました。
なお、この空気潤滑システムは「2013年 日経地球環境技術賞」にて最優秀賞を受賞、「Lloyd's List Global Awards 2013」のファイナリストに選出されるなど、国内外で数多くの高い評価を受けています。
これまでの受賞歴は、下記関連リンクの「環境表彰」をご参照ください。
- ※3モジュール船
石油・ガス開発サイトや工場に設置されるプラントなどを数千トン規模のプレ・ハブ構造物に分割して、海上輸送およびロール・オン/オフ方式で積揚する特殊重量物輸送。
カリフォルニア州減速航海プログラムへの参加
当社は、米国カリフォルニア州ロングビーチ港港湾局が実施している減速航海プログラム「グリーンフラッグプログラム」に参加しています。
これらのプログラムは、船舶からの排気ガスを抑制する目的で、両港に入出港する船舶に対して沿岸20マイル(約37キロメートル)若しくは40マイル(約74キロメートル)以内の海域において12ノット以下で航行することを推奨しています。
当社は沿岸40マイル以内の海域において減速航行し、例年90%以上の高順守率を維持しています。
燃料油添加剤開発を通じた環境規制への対応
当社と日本油化工業(株)は、硫黄分濃度規制(SOx規制)に対応する方策の一つとして、適合燃料油(硫黄分0.5%以下の燃料油)の性状を研究してきており、2019年5月にはスラッジ分散型燃料油添加剤「ユニック800VLS」を開発しました。「ユニック800VLS」は、適合燃料油の安定性不良において効果を発揮する一方、適合燃料油自体の性状・性質が多様化している現状を踏まえ、さらなる汎用性と環境保全貢献の観点から2022年5月に「ユニック800Eco」を開発しました。
「ユニック800Eco」は、スラッジ分散効果をより高めるとともに、燃焼改善効果を加えることに成功しました。これまで国内外の適合油で3回実施した燃料消費削減試験において、添加剤不使用時と比べ燃費は最大約1.2%の低減効果が得られ、また排気ガス成分は一酸化炭素(CO)などの削減効果が認められています。
当社と日本油化工業は引き続きSOx規制を遵守するとともに、よりスラッジ分散効果と燃節効果の高い添加剤の開発に尽力し、船舶から排出される二酸化炭素(CO2)の削減にも貢献します。
船底付着物の除去による推進効率の改善
船体やプロペラに付着する海藻や貝殻などは推進抵抗を増し、運航時の燃料消費量の増加を招きます。船底には付着を防ぐための塗料を塗布しますが、一定期間を過ぎると付着が始まってしまいます。定期的にダイバーによる海中の船体汚損状況や船底塗装状況の点検を行い、最適な時期にアンダー・ウォーター・クリーニング(UWC=海中における船底付着物除去作業)や、プロペラ研磨を実施しています。UWCにより約10%、プロペラ研磨で1~2%の燃料油消費改善がみられるほか、生物多様性保全の観点でも環境に配慮した船体のメンテナンスに積極的に取り組んでいます。