ダイバーシティ&インクルージョン

「35,000人のグループ全社員の能力を挑戦に活かす日本郵船グループ」を実現するために、当社はダイバーシティ&インクルージョンを経営戦略の重要な柱と位置付けています。
中期経営計画および2024年9月に策定した日本郵船グループの「D&I Promise」にも示されているように、企業の持続的成長には人材の多様性とそれを尊重し歓迎するインクルーシブな組織風土の醸成が極めて重要です。人材の多様性確保は、性別国籍など特定の属性に限らず、また、時代の要請に応じ常に見直していくべきものですが、今般改めて、当社にとって持続的成長促進の素、新たな糧であると考える「女性」の活躍推進を、「経営に資するジェンダーダイバーシティ」として再定義し、積極的に進めることを決意し表明いたします。過去の採用比率の偏りや業界特性による女性社員比率の低さを踏まえると、その実現は容易ではないと認識していますが、経営トップとしての姿勢を明確に示すことで一歩でも近づけたいと考えます。
これまでも2030年女性管理職比率30%という目標を掲げ、制度の拡充や働き続けられる環境作りに取り組んできました。しかしながら、男性中心社会を前提とした「辞めないための女活」という側面があったことも否定できません。今後はそこから一歩踏み出し、働き方改革や制度改善によって、これまで制約があると思われていた女性の活躍の場を広げ、より多様な観点を意思決定の過程に取り込みます。この取り組みは、事業の進め方・部下の育成・ステークホルダーとのコミュニケーション等々、従来男性中心社会で硬直化していたものをブレークスルーする起爆剤となると私は確信しています。
さらに、女性の活躍の場を広げるプロセスは、ジェンダーに関わらず、介護や育児などのライフイベントとの両立を含めた多様な働き方を望む全ての社員の力量発揮につながるものです。全社員がこの問題を自分事として捉え、共に支え合うことでより強固な組織を築いていけるよう、役員・社員一同で取り組んでまいります。

2024年10月
代表取締役社長
曽我 貴也

多様な人材が活躍する環境を実現

当社グループ社員数は3.5万人を超え、多様なバックグランドを持つ社員が、グローバルなフィールドで人間力を発揮しながら協働し、安心して働ける、活躍できる職場環境の充実に、引き続き取り組んでいきます。

従業員満足度

2022年に日本郵船グループ社員・役員を対象にエンゲージメントサーベイを実施しました。
エンゲージメントサーベイを通じて各組織の状況や課題を可視化・分析し、組織活性化につなげていきます。
また、従業員から会社・組織に対する意見を収集する機会を年に一度設けており、社員の要望、考えをより良い組織運営に反映するためのコミュニケーションも大切にしています。

【陸上職社員】

誰もが活躍できる環境づくり

当社は人事グループに人事企画・D&Iチームを設置し、多様な人材が活躍できる環境整備と職場風土の醸成を促進するためにさまざまな施策を実施しています。
2001年に「総合職・一般職」といった職種区分を廃止、人事制度を一本化し、男女の区別なく活躍できる制度、環境づくりを進めてきました。
2020年10月には人事制度の一部見直しを行ない、出産や育児、介護、健康面での不調などによるキャリアブレイクがあっても、復職後のフェアな評価により、ブランク期間がハンディキャップとはならない仕組みに変更しました。
また、法定を超えた育児・介護休業制度、フレックスタイム制度、短時間勤務制度やリモートワーク制度など、さまざまな事情を抱える社員も仕事と生活とのバランスを取りながら業務を遂行できる仕組みを整えるとともに、育児や介護など時間に制約のある部下を持つ管理職の意識改革を目的としてイクボスセミナーを2016年より毎年開催し、誰もがライフイベントとキャリアを両立できるよう取り組んでいます。

各種制度とキャリア形成支援の流れ

制度の詳細

育児休業制度
子の出生翌日から最大2年8週まで取得可能です。
出生時育児休業制度
子の出生後8週間以内に4週間(28日)まで取得可能です。分割して2回取得することができ、 土日祝日を含む14日を有給としています。
育児フレックスタイム制度
妊娠中や子育て中(小学校6年まで)の社員は、フレキシブルな勤務時間で働くことが認められています。
育児短時間勤務制度
あらかじめ特定した時間で育児短時間勤務(1日最長2時間まで)ができます(小学校1年まで)。
育児短時間フレックス勤務制度
1日最長2時間までの時短が可能です(小学校1年まで)。
 
リモートワーク勤務制度
週4回を限度として利用できます。
各種休暇制度
子の看護休暇、介護休暇(1日単位、半日単位、又は1時間単位で取得可能)、マタニティー休暇等。
介護休業制度
家族の介護と仕事を両立することができるように、通算1年までの取得が可能になっています。
介護フレックスタイム制度
家族の介護をする社員は、フレキシブルな勤務時間で働くことが認められています。
その他福利厚生
福利厚生外部機関サービスを活用してベビーシッターサービスの利用が可能です。
配偶者転勤休業制度
配偶者の転勤に同行を希望する社員のために、最長3年間の休業の後に復職できる制度があります。
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女性活躍のための取り組み

出産や育児などの休職の際には、制度説明、休職前面談、復職前面談を行うことにより、不安を取り除き高い意欲で復職できることを目指しています。さらに休業などにより業務における経験の不足が懸念される場合には、本人のやる気次第で自己成長を実現できる研修や機会の提供にも取り組んでいます。
また土日祝日を含む14日を有給にする出生時育休制度の導入やイクパパセミナーの開催などにより、育児・家事は男女共に行うものであるとの意識や職場風土の醸成を継続しています。男性社員が主体的かつ積極的に育児・家事に関わる事で、配偶者の時間や気持ちに余裕ができ、女性や時間に制約のある社員の更なる活躍に繋がると考えています。

女性管理職比率

当社は、国内外での事業展開を主導できる人材を性別に関係なく育成、登用してきました。その結果女性管理職比率(単体)は2013年度以降10%を超えて推移しています。2030年女性管理職比率30%の目標設定をし、多様性のある強い組織、健全なジェンダーバランスの実現に向けて、取り組みを着実に進めていきます。

女性管理職者数(単体)

  2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
女性管理職(人) 67 66 62 60 59
女性管理職比率(%) 14.5 14.7 14.0 13.7 13.6

女性の育児休業取得者数、育児休業後の復職率、復職後の定着率の推移

  2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
育児休業制度利用者数(人) 12 7 16 12 7
育児休業制度利用後の復職率(%) 100.0 100.0 91.0
(退職者1名)
100.0 100.0
育児休業制度利用後の定着率(%) 93.8
(退職者1名)
100.0 100.0 100.0 100.0

「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(女性活躍推進法)に向けた行動計画を策定し取り組んでいます。2021年4月始期の第2次行動計画では、ダイバーシティ&インクルージョンの実現に向けて多様な人材が活躍できる環境の整備と職場風土の醸成をさらに推進します。
あわせて第1次行動計画で策定した、女性の海外勤務経験者を増やす施策も引き続き実行していきます。当社社員のキャリアアップにおいて海外勤務経験は重要な要素であり、第2次行動計画の施策と合わせて実行することで、自己成長を実現する場の補填となり、将来管理職として活躍する際にも活きる経験の1つになると考えています。

日本郵船株式会社 行動計画

第1次行動計画

  1. 1計画期間
    2016年4月1日~2021年3月31日までの5年間
  2. 2行動計画に掲げる目標と取組内容
    女性の海外勤務経験者の延べ人数を80人以上とする。
    1. (1)育児中の社員も活躍できるキャリア形成を支援する。
    2. (2)海外勤務時に子女を帯同した場合のサポート体制を充実させる。
    3. (3)海外勤務経験者によるフォーラムを開催し、社員が自身のキャリアプランを描く機会を設ける。

本行動計画で目標に掲げた、女性の海外勤務経験者の延べ人数は78名、達成率97.5%となりました。

女性の海外勤務経験者数(延べ人数)

第2次行動計画

当社では、2001年に人事制度を一本化し、国内外での事業展開を主導できる人材を性別関係なく育成、登用してきました。また第1次行動計画の取組みにより、ワーキングマザーを含む女性社員の海外勤務経験者も順調に増やしてきました。

今回の計画策定は「誰にでもあるライフイベントとキャリアの両立を目指す」ことを方針としました。
2020年10月に人事制度の一部見直しを行い、出産や育児、介護、健康面での不調などによるキャリアブレイクがあっても、復職後のフェアな評価により、ブランク期間が即ハンディキャップとはならない仕組みに変更しました。更に休業等により業務における経験不足が懸念される社員については、本人のやる気次第で自己成長を実現できる研修機会や場の提供など、「NYKグループESGストーリー」に掲げたとおり進めていきます。

キャリアブレイクが起こりがちな女性社員に特化した施策を進めると共に、育児休業取得の促進など男性社員への働きかけも行っていきます。男性社員が主体的かつ積極的に育児・家事に関わることで、配偶者の時間や気持ちに余裕ができ、女性や時間の制約のある社員の更なる活躍に繋がると考えています。育児・家事は男女共に行うものであるとの意識を高めると共に、誰もが育児休業を取得しやすい職場風土の醸成を更に進めます。

ダイバーシティ&インクルージョンの実現に向け、社内全体意識の底上げや行動変容を促し、男女問わず働きやすい職場環境の整備により社員皆の活躍に繋げられるよう取り組んでいきます。

日本郵船株式会社 行動計画

  1. 1計画期間
    2021年4月1日~2026年3月31日(5年間)
  2. 2行動計画

    行動計画(1)

    • 異業種交流やスキルアップを目的とする社外派遣型の研修について女性参加率を30%まで増やす。
    • 女性のみを対象とする研修も含めて、女性参加者が全体の半分になるよう女性の派遣を増やしていく。

    計画策定の背景

    • 出産や育児、介護などによるキャリアブレイクがあっても、研修による機会や経験の補填でステップアップや成長が可能と考えられる。
    • 社外派遣型の研修機会の均等を図る。

    取組み内容(2021年4月より)

    • ライフイベントなどを踏まえ、既存の研修だけではなく、様々な層それぞれに合う研修を増やしていく。
    • やる気次第で自己成長を実現できる機会や場の提供など、ポジティブアクションも検討する。
    • ステップアップやキャリアの幅を広げる経験や機会を補填する施策として女性社員の出向を増やしていく。

    行動計画(2)

    • 男性社員(陸上職(海技者)含む)の育児休業取得率を100%とする。

    計画策定の背景

    • 男性の育児休業取得者は増えているが、取得率は女性社員の100%に比べると低い。
    • 男性社員が主体的かつ積極的に育児に取り組むことで、本人の成長や能力開発が期待されるのみならず、配偶者の時間や気持ちに余裕ができ、女性の更なる活躍に繋がると考えられる。

    取組み内容(2021年4月より)

    • 制度を周知し、個別に制度利用を働きかける。
    • 男性社員が主体的かつ積極的に育児・家事に取り組む意識を高めると共に、上司や周囲の理解が深まるよう啓発等を行い、陸上職/海上職問わず、誰もが育児休業を取得しやすい職場風土の醸成を更に進める。

以上

キャリア採用

戦略分野への要員の重点配置やコーポレート機能の強化等に対応するため、新卒採用のみならず、様々なバックグラウンドを持つ方のキャリア採用を推進し、多様性の高い組織を目指しています。

採用実績(単体)

  2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
新規雇用人数 61 54 66 87 89
キャリア採用数 4 1 12 31 27
キャリア採用比率(%) 6.6 1.9 18.2 35.6 30.3
  • 新卒・キャリア採用

再雇用制度

2006年4月より、NCC(NYK Career Club)制度およびNFC(NYK Friend Club)制度の運用を開始しました。NCC制度は高齢者雇用安定法改正に対応したもので、60歳定年後、65歳まで再雇用する制度です。また、NFC制度は、自己都合を事由に退職した社員を有期契約で再雇用するものです。どちらの制度も、意欲と能力がある社員に退職後も活躍する場を提供することを目的としています。

【海上職社員】

船員の多様化

幅広い事業をグローバルに展開するためには、優秀な船員の確保・育成が必要です。当社グループの約660隻の運航船に従事する船員のうち、日本人は1割未満であり、船員の多国籍化が進んでいます。将来の幹部職員育成を目的に、2007年にフィリピンに開設した商船大学NTMA卒業生はもちろんのこと、インドや東欧、アジア諸国の商船大学と提携し、各国商船大学から学生を選抜し当社運航船での船上教育を実施しています。また、海技免状取得後は、航海士や機関士として当社運航船に乗船、近年は陸上でも海技者として活躍の場を広げています。

  • NTMA
    NYK-TDG Maritime Academy

国籍別船員比率※1

  1. ※1NYK SHIPMANAGEMENT PTE LTD.の船員(職員・部員)比率
  2. ※2中国、ベトナム、ロシア、ミャンマー、ナイジェリア、アンゴラ、パナマ、シンガポール

女性船員

当社は他の外航邦船社に先駆けて2004年に初の女性海技者を採用し、2024年4月1日現在25名の女性海技者が、海上・陸上を問わず全世界で活躍しています。

女性船長誕生

2017年4月に、当社132年の歴史の中で初めての女性船長が誕生しました。

参考:当社日本人船員の歴史

  • 1885年 日本郵船会社創業
  • 1896年 ボンベイ航路「廣島丸」で初めての日本人船長(島津五三郎)が誕生
  • 1920年 全ての高級船員(約1,400人、船長、機関長、通信長、事務長など)を日本人で占める
  • 2004年 邦船社に先駆けて女性海技者を採用
  • 2006年 自社養成の開始(一般大学卒業生の海技者としての採用)
  • 2017年 会社設立以来132年目で初めての女性船長の誕生
  • 2020年 自社養成海技者から初の船長が誕生