環境規制

国際海運では、船舶に関連する環境規制が順次強化されています。当社グループでは船舶に関連する法規制を把握し、順守徹底をすることはもちろんのこと、さらなる海洋・地球環境の保全に努めます。

環境規制動向

当社は、船舶に対する環境規制の在り方や規制内容に関し、IMO(国際海事機関)での議論に積極的に参加し、船主・オペレーターの立場で、国際ルールづくりに関与しています。

環境規制年表

環境規制年表
  1. 一般貨物船、LNG運搬船、クルーズ旅客船、15,000DWT以上の大型ガス運搬船(LPG運搬船)の削減率は30%、コンテナ船の削減率は船のサイズにより15-50%。その他の船種、15,000DWT未満のガス運搬船は2025年に適用開始、削減率は30%。
  2. ※1EEDI : Energy Efficiency Design Index(エネルギー効率設計指標)
    船舶の設計・建造段階で仕様に基づく原単位(トン・マイル)あたりのCO2排出量を評価する指標
  3. ※2SEEMP : Ship Energy Efficiency Management Plan(船舶エネルギー効率管理計画書)
    航海ごとにエネルギー効率を改善するための運航上の取り組みを明示
  4. ※3DCS : Data Collection System(燃料消費実績報告制度)
    総トン数5,000トン以上の国際航海に従事するすべての船舶を対象に、燃料消費量、航海距離および航海時間をIMOに報告する制度。EU地域ではIMOに先行して2018年1月1日より、同様の制度(EU-MRV)を導入
  5. ※4EEXI : Energy Efficiency Existing ship Index(就航船のエネルギー効率指標)
    新造船を対象とするEEDIに対し、既に就航している船を対象とする同様のエネルギー効率指標
  6. ※5CII : Carbon Intensity Indicator(燃費実績の格付け制度)
    年間CO2排出量実績により船種毎に5段階の格付けを行い、CO2削減のための改善を促進する制度
  7. ※6ECA : Emission Control Area(大気汚染物質排出規制海域)

大気汚染防止

SOx

硫黄分を含む燃料を燃焼させると大気汚染の原因となるSOxが発生します。
IMOは、船舶から発生するSOxを低減させる規制を発効しており、燃料油の硫黄分濃度の上限を順次引き下げています。
欧州、アメリカ、カナダの指定海域(ECA:Emission Control Area)で使用する燃料油の硫黄分濃度上限は、2015年1月から1.0%から0.1%に引き下げられており、一般海域で使用する燃料油の硫黄分上限は、2020年からは、0.5%となりました。

当社グループは、この規制への対応として、規制に適合する油(低硫黄燃料油)の使用、SOxスクラバー(排ガス脱硫装置)搭載、LNG燃料等への転換の3つを選択肢として、個船ごとに最適な対応を進めてきました。2020年1月からの適合油への切り替えを安全かつ確実に行うため、社内プロジェクトを立ち上げ、切り替えを適切に行うとともに、適合油のエンジン機器への影響も最小限に留め、大きな混乱も無く、確実な調達とともに適切に運用されています。

NOx

燃料油を燃焼させると大気汚染の原因となるNOxが生成されます。
IMOは、船舶から発生するNOxを低減させるための規制を発効しており、2011年以降の建造船は2次規制に対応しています。
さらに2016年1月以降の建造船からは米国・カナダ沿岸、米国カリブ海を、2021年1月以降の建造船からは北海・バルト海を航行する際に厳しい3次規制が課されています。

温暖化防止

エネルギー効率設計指標(EEDI)

燃費効率の高い船舶の建造を目的とし船舶の設計・建造段階における単位輸送量(トン・マイル)当りのCO2排出量を一定値以下にすることを義務付けた規制です。
規制値は5年毎に段階的に強化され、2013年にフェーズ0から規制が開始されています。

船舶エネルギー効率管理計画書(SEEMP)

運航する船舶からのCO2排出削減を目的とし導入された規制で、2013年1月1日以降、全船舶が船上にSEEMPを保持することが義務付けられています。
各船では、航海ごとにエネルギー効率を改善するための運航上の取り組みを示した管理計画書、「船舶エネルギー効率管理計画書(Ship Energy Efficiency Management Plan:SEEMP)」を航海前に作成します。
そして航海中はその計画に沿って運航し、航海が終わればレビューを行います。
効率運航のためのPDCA(Plan、Do、Check、Act)サイクルを実施するツールとして使用しています。
SEEMPはPart I、Part II(2019年~)と段階的に適用内容が強化されており、2023年からPart IIIとしてCII評価の記載が必要となります。
CIIに関しては以下の燃料実績の格付け制度をご参照ください。

燃料消費実績報告制度(DCS)

国際海運から更なるCO2排出削減対策として、既存船を含めた船舶に対して、燃料消費量等の運航データ収集、報告及び認証を課す燃料消費実績報告制度(Data Collection System)が採択されており、2019年より関連データの収集及び報告が義務付けられます。

就航船のエネルギー効率指標(EEXI)

新造船に対するEEDIによる規制と同様に、就航船に対する規制として単位輸送量当たりのCO2排出量を制限するエネルギー効率指標(Energy Efficiency Existing ship Index : EEXI)による規制が2023年から適用されます。

2018年4月、IMOの第72回海洋環境保護委員会で採択されたGHG削減戦略では、2030年までの短期削減目標と2050年までの中長期削減目標が既定されております。
現在までに国際海運からの温室効果ガス(GHG)排出の抑制対策として、エネルギー効率設計指標(EEDI)、エネルギー効率管理計画(SEEMP)による規制、及び燃料消費実績報告制度(DCS)が導入されておりますが、EEXIによる規制は2030年までの短期削減目標(国際海運全体で平均燃費を40%改善)を達成するための規制となります。

燃費実績の格付け制度(CII)

GHG短期削減対策において、技術アプローチによる対策としてのEEXIによる規制のほか、運航アプローチによる対策として各船舶のDCSのデータを基に1年間の燃費実績をA-Eの5段階で格付けを行うCII(Carbon Intensity Indicator)制度がEEXIと同様に2023年から適用されます。(格付けはAが最良、Eが最低格付け)

海洋環境保全

バラスト水管理条約

海洋環境に影響を及ぼす水生生物の越境移動を防止するため、2017年9月に発効されました。
船舶はバラスト水を一定の基準まで浄化する装置の搭載が順次義務付けられます。
当社グループでは、計画的にバラスト水処理装置の搭載を進め、2024年には全船への搭載が完了する予定です。

シップリサイクル条約

船舶が解体される際の労働災害や環境汚染を最小限にするために、国際海事機関(IMO)にて2009年にシップリサイクル条約が採択され、発効に向けた批准が進んでいましたが、2023年6月に発効要件を達成し2025年6月26日に発効することが決定しました。
条約発効後は、運航船舶は船上に存在する有害物質の量・設置場所などを記載したインベントリリストを作成し、船上に保持することが義務付けられます。