コンプライアンスの強化
ガバナンス
当社グループのバリュー(企業理念を実現するために、社員が共通して持つべき価値観)の一つである「誠意」とは、相手を尊重し、相手の立場を徹底的に考え抜くことです。コンプライアンスの文脈では「人権尊重・法令順守を徹底した上ですべてのステークホルダーの立場を考え抜き、高い倫理感を持って事業活動を行うこと」であり、当社グループはこれを日本郵船グループ企業行動憲章に定めています。
2024年6月現在、当社グループでは、コンプライアンスに関する体制として主に下記を整備しています。
- 当社グループの企業理念、企業行動憲章を定め、役職員に適用される行動規準、社規則等を制定し、内部通報制度を整備
- コンプライアンスに関わる体制整備と活動を統轄するチーフコンプライアンスオフィサー(CCO)を設置し、コンプライアンス委員会がコンプライアンス状況を評価
- 子会社等においても同様の体制整備を促進
日本郵船グループのコンプライアンス体制図
コンプライアンス強化に向けた主な取り組み
日本郵船株式会社 行動規準
すべての役員・従業員が個々の行動において、健全なコンプライアンス(法令、社内規則、企業倫理・社会規範の遵守)意識を持って日々の業務を遂行できるよう、当社グループでは、グループ企業理念とグループ企業行動憲章を具体化した「日本郵船株式会社 行動規準」を整備しています。行動規準は、役員および従業員が守るべき正しい行動の指針として周知徹底を図っています。
行動規準は、事業環境や社会情勢の変化に合わせ、定期的に見直しを行っています。改訂時には、内容の理解を深めるためのガイドブックを配布するとともに、社内で説明会を開催しています。また、役員および従業員が行動規準で定められている内容をきちんと理解し、行動しているかを確認する機会として、年に一度、行動規準の遵守に関する「誓約書」の提出を求めています。
コンプライアンス委員会
コンプライアンス委員会では、コンプライアンス年度実施計画や活動方針のほか、コンプライアンスに関する重要な事項の審議・決議を行っています。同委員会は年2回開催され、審議事項は取締役会を通じて社外役員に報告しています。
コンプライアンス総点検活動と教育
コンプライアンス総点検活動
当社グループでは毎年9月をコンプライアンス強化月間と定め、役員・従業員等が自らの行動や業務プロセスを見直すことを目的としたコンプライアンス総点検活動を推進しています。活動の一つとして「コンプライアンスDAY」を設け、チーフコンプライアンスオフィサーからのコンプライアンスに関する意見の発信と、弁護士によるコンプライアンス研修を行うタウンホールミーティングを、当社およびグループ会社に対し生配信で実施しています。
また、当社においては役員・従業員等一人ひとりに行動規準への誓約を改めて確認し、コンプライアンス意識調査を行っています。意識調査の結果は社内にフィードバックすることでコンプライアンス意識のさらなる向上を図っています。
2023年度の行動規準への誓約については当社役員・従業員(派遣・他社からの出向者含む)のうち2,108名を対象に確認を実施し、その100%から誓約の回答を得ました。
2023年度コンプライアンス意識調査については2,107名を対象に実施し、回答率は92.26%でした。
コンプライアンス教育
当社では、グループ会社を含む従業員のコンプライアンス意識のさらなる徹底とコンプライアンス実践に必要な知識・情報の周知を図るため、各種コンプライアンス教育・研修を継続的に実施しています。
2023年度も、新たに当社および当社グループ会社に入社した従業員向けに、ESG研修の一内容として当社行動規準をベースとしたコンプライアンス教育を実施しました。また、海外赴任時には競争法・贈収賄禁止法・経済制裁法・コンプライアンス研修を、グループ出向時のマネジメント研修として取締役の義務と責任・コンプライアンス研修を実施するなど、従業員の階層別にもきめ細かい教育・研修を実施しています。
コンプライアンス強化月間である毎年9月には、当社および国内グループ会社全従業員を対象に、対面およびオンラインのハイブリッド形式によるコンプライアンス研修を実施し、当社グループ全体のコンプライアンス意識の浸透に努めています。また、対話形式を取り入れたワークショップ型研修を新たに導入するなど、教育・研修の機会を増やしています。
当社役職者向けには、過去に発生した事案を教材にして、企業不祥事の再発防止を目的とした研修を行っています。この研修は、過去の事案を組織の知見として取りまとめ、組織的学習として今後の経営に活かす未来志向型のInstitutional Memory 研修であり、将来にわたる学びとすることを目指しています。
また、リスクの高い特定の事業部門へ向けた研修の強化も行っており、個別に競争法研修や本船オペレーター向けの贈収賄防止研修を実施しています。
海外グループ会社に対しては、現地弁護士を講師とし、それぞれの地域性を踏まえた競争法・贈収賄禁止法・経済制裁法・コンプライアンス研修等を内容とする教育・研修プログラムを継続的に実施しています。2023年度は23カ国で2,027名が研修を受講しました。
加えて、国内外のグループ会社を対象としたeラーニングを実施しています。競争法、贈収賄禁止法、経済制裁法、コンプライアンスをテーマに日本語・英語・中国語で展開し、2023年度の受講者は8,415名で、対象者受講率は95.8%でした。
内部通報窓口
国内ヘルプライン
当社グループ(国内)では、職場での不正やハラスメント、法令違反などコンプライアンスに関わる懸念・問題の相談先として、従業員や外部弁護士が聞き役となる「郵船しゃべり場」や社内HOTLINE、外部業者により運営される相談窓口、ハラスメント関連相談窓口など、複数の相談窓口を設けています。国内ヘルプラインの一つである「郵船しゃべり場」では、社外弁護士を含む6名の聞き役がコンプライアンスに関わる相談・通報を幅広く受け付けており、現在グループ会社約66社が利用しています。
国内ヘルプラインは、当社グループの従業員等※と役員、退職者(退職後1年以内)が利用可能です。
届いた相談に対しては、当社の調査対応部署が、相談者が不利益を被らないこと、および相談者が望む場合はその秘匿を第一としながら真摯に対応し、職場環境の改善につなげています。
- ※従業員等:従業員(有期社員、出向社員、無期転換社員、派遣社員を含む)および各事業所においてその業務の執行に直接または間接に携わる者(業務委託契約または請負契約に基づき、業務の執行に間接に携わる者を含む)
海外ヘルプライン
海外のグループ会社では、地域ごとにリージョナルマネジメントオフィスが、外部業者により運営される内部通報窓口を設置しており、海外のグループ会社の役職員等が利用することができます。
競争法・贈収賄専用窓口
競争法・贈収賄専用窓口は、独占禁止法等の競争法や贈収賄に関する通報・相談を受け付けています。当社および国内・海外のグループ会社の従業員、役員、退職者(退職後1年以内)が利用できます。
内部通報受付後の流れ
内部通報窓口の周知
内部通報制度および窓口の周知のため、コンプライアンス研修での説明や社内掲示板、当社グループのイントラネット、グループ報への掲載、ポスター掲示、全従業員へのメール案内を行っています。また、毎年当社の全従業員を対象として実施しているコンプライアンス意識調査において、各内部通報窓口や内部通報受付後の流れに関する認知度の調査を行い、内部通報制度の浸透度を確認しています。
内部通報窓口の社内認知度(2023年度)
通報結果
独占禁止法等の遵守
海運自由の原則(公海における自由航行、領海内における無害航行)が支配する外航海運業は、市場の参入と退出が自由であり、競争激化に陥りやすいため、その弊害である安定輸送網の断絶、途上国海運・産業の競争力の喪失などの負の面を軽減すべく、ある一定の条件の下、独占禁止法適用除外の扱いを受けてきました。
現在は、そのような法的保護は縮小する一方で、社会インフラとしての責任を全うするため、寄港頻度と多様な航路網の維持を目的として船社間での協調配船が行われており、競合他社と接触する機会が多く存在する業種であるといえます。
こうした業種特性を踏まえ、当社グループでは従前より「独占禁止法等遵法徹底委員会」を設置し、独占禁止法対応を主眼に、贈収賄関連法令、経済制裁法を含めた当社グループ内の法令遵守の徹底に努めてきました。2019年3月には、同委員会の名称を「遵法活動徹底委員会」とし、特定の法令のみならず、法令全般および各種許認可なども含めた遵法の徹底を図っています。
違反への対応
当社グループは、2012年9月以降、自動車などの貨物輸送に関して独占禁止法違反(および海外競争法)の疑いがあるとして、複数の競争当局より調査を受けておりました。
また、当社および一部の海外現地法人は、複数の地域において損害賠償請求訴訟(集団訴訟)を提起されています。
このような事態を真摯に受け止め、グループ役員・従業員※一人ひとりの意識を高めるべく独占禁止法遵守を再徹底するための体制構築および活動を推進しています。
- ※社員に加え、他社からの出向者および派遣社員を含む
再発防止に向けた施策(2013年から継続)
- 遵法活動徹底委員会の開催(毎年開催)
- 社長を委員長とし、取締役、執行役員、監査役、海外地域統轄会社の地域長※1・本社のグループ長、各グループのコンプライアンス担当者が参加
- 2023年は9月に実施。独禁法等遵法徹底委員会より数えて、2023年9月までに合計18回開催
- 国内外グループ会社を含む全事業部門のリスクアセスメント実施、ガイドライン策定
- 独占禁止法・競争法遵守に関する誓約書の取得
- 業界会合届出制度※2を本社・国内外子会社の役員・従業員を対象に導入
- ※1ガバナンス強化策の一環で、2020年度より海外4極の地域統轄会社のリージョナルガバナンスオフィサーにも対象を拡大
- ※2同業他社と接する機会を限定し、必要な会合に参加する場合は、事前の届け出および事後の面談内容の報告を行うよう定めた制度
贈収賄禁止の徹底
当社グループは日本国不正競争防止法(外国公務員贈賄罪)、米国海外腐敗行為防止法、英国贈収賄防止法などの各国贈収賄防止法に対応するため、2014年1月に贈収賄禁止に関する基本方針およびガイドラインを整備しました。
2015年度より国内外の従業員を対象に、贈収賄禁止に関する研修を実施し、2021年より対象の部門に特化したファシリテーションペイメントに関する研修を行っています。また対象の部門にて運航船および第三者代理店に対して注意喚起のレターを送付し、現場での贈収賄および第三者を通じた贈収賄の禁止に向けた取り組みを継続的に行っています。
また、海運業界全体における公正な取引の実現に向けて、腐敗排除・防止を目的とした活動を行っているグローバルネットワークであるMaritime Anti-CorruptionNetwork(MACN)に、2015年度より加入しています。
加入以降、MACNとの連携を強化し、2020年からは贈収賄防止の実効性を高めるために、MACNのヘルプデスクを活用する取り組みを行っています。
贈収賄デューディリジェンスの実施
当社グループは、2016年4月に外国公務員贈収賄防止対策の体制を確立しました。高リスク国での新規事業を検討する際には、法務部門がパートナーや代理店候補に贈収賄関連の問題がないかスクリーニングを行い、契約締結時には贈収賄禁止条項の織り込みなどについて提言・確認をしています。
法務関連のリスク管理体制
新規投資判断および事業の検討にあたっては、独占禁止法・贈収賄・経済制裁に関する確認のため、法務部門でのスクリーニングとデューディリジェンスを行うなどのリスク管理体制を整えています。
反贈収賄に関する第三者認証
当社は、ビジネスにおけるコンプライアンス遵守に関する国際的な認証機関であるEthixbase360によるTcertification 適正審査に合格し、認証を取得しています。
今後も、国際的な商業取引における公正かつ透明な適性取引に努めていきます。
- Tcertification
-
ID:TC3182-6961
有効期間:2024年1月15日〜2025年1月14日
- 関連リンク:
政治献金
当社は、特定の政治団体や政治家を支持または支援することを目的とする政治活動を行いませんが、諸外国の制度と比較した上で、税制など国際的な競争条件の均衡化に向けた働きかけ等を行っています。この活動にあたって、政治・行政との透明性のある、正しい関係を維持するために、以下2点を徹底しています。
- 政治資金規正法などの関連法規ならびに社規則を社内に周知徹底
- 献金については、渉外担当役員ならびに必要に応じて関係役員に報告・確認し、社内基準に則った手続きを経て、献金先・献金額を決定
税務コンプライアンス
当社グループは各国の法令を遵守し適正な納税義務を果たすことが社会的責任であるとの認識の下、税務コンプライアンス向上に努めています。
近年、企業の活動実態と各国の税制や国際課税ルールとのずれを利用した課税回避行為が問題視されています。これに対処するOECDによるBEPS(Base Erosion and ProfitShifting)プロジェクトなど国際的な税務フレームワークに対応することが税務の透明性の確保に不可欠であり、対応を進めています。