コーポレート・ガバナンスに対する取り組み

コーポレート・ガバナンスの体制

コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方

当社は、株主・投資家、顧客、取引先、地域社会、当社および当社グループの従業員などのステークホルダーの信頼を得て、その期待に応えるべく経営の透明性と効率性を確保し、適切な経営体制の構築・維持に努めています。機関設計については、2023年6月に監査等委員会設置会社に移行しました。取締役会は、重要な業務執行の決定権限を業務執行取締役へ委任することにより、劇的に変化する経営環境に迅速に対応する体制を構築し、取締役会による決議と監督の下、業務執行取締役に加えて執行役員が業務を執行しています。独立社外取締役は取締役会、指名諮問委員会・報酬諮問委員会のほか、重要な委員会・会議への出席、グループ全体のガバナンスと内部統制強化に関する提言、役員懇談会における活動、国内外現場の視察などを行っています。

当社のコーポレート・ガバナンスに関する基本的な枠組みおよび考え方を「コーポレートガバナンス・ガイドライン」として取りまとめ、当社ウェブサイトにおいて公開しています。

当社のコーポレート・ガバナンス体制図(2024年6月19日時点)

組織体制の強化に関する最近の主な取り組み

機関設計の変更

  • 2023年6月21日の定時株主総会をもって監査等委員会設置会社に移行
  • 取締役会のモニタリング機能強化と執行側への権限移譲による意思決定の迅速化を実現
  • 計画的アジェンダセッティングを導入し、より長期的な企業価値向上につながる事項の重点的な審議が可能に

取締役会構成の見直し

  • 取締役12名のうち6名が社外取締役に

ESG経営の実装に関する最近の主な取り組み

体制の変更

  • ESG戦略本部を新設
  • ESG経営推進委員会をESG戦略委員会に改称。委員会は各本部を代表する執行役員・グループ長と外部有識者で構成し、ESGに関わる幅広いテーマを戦略的に討議

役員報酬体系への反映

  • 業績連動型株式報酬の指標の一つとしてESG指標を導入

ガバナンス強化のこれまでの歩み

取締役会の実効性向上のために

機関設計の工夫

経営と執行の分離

当社では、重要な業務執行の決定権限を業務執行取締役へ委任することで意思決定を迅速化するとともに、取締役会では中長期経営戦略、人的資本や知的財産への投資等を含む経営資源の配分、事業ポートフォリオに関する戦略の実行、サステナビリティ、重大リスクへの対処といった企業価値向上につながる事項を重点的に審議することで、取締役会の実効性向上に努めています。

業務執行の体制としては、会長、社長、本部長である執行役員などで構成される経営会議において取締役会付議事項を含む重要な業務執行に関して審議を尽くした上で、重要な業務執行の決定を委任された業務執行取締役である社長が決裁する体制を整えています。

取締役関連データ(2024年6月19日現在)

監査等委員会の設置

当社は、一定数(3分の1以上)の独立社外取締役を含む取締役会と、独立社外取締役が過半数となる監査等委員会を設置し、監査等委員会の機能を有効に活用しながら経営に対する監督機能の強化を図り、また取締役会における議決権などを持つ監査等委員である取締役にて構成する監査等委員会を設置することにより、取締役会のモニタリング機能強化を図っています。

指名諮問委員会および報酬諮問委員会の活用

当社は役員人事および報酬制度における審議プロセスの透明性と客観性を高めるため、取締役会の諮問機関として、独立社外取締役を過半数とし、委員長を独立社外取締役とする指名諮問委員会および報酬諮問委員会を設置しています。両委員会は、取締役(監査等委員である取締役を除く。)および執行役員の選解任や報酬に関わる重要な事項を協議し、取締役会への報告または提言を行います。

両委員会の構成と各委員の出席状況(2023年度)

運用上の工夫

取締役会の規模・バランス・多様性

当社は、取締役会の全体としての知識、経験および能力のバランス、多様性および規模に関する考え方を定め、取締役の知識・経験・能力等を一覧化したスキル・マトリックスを取締役の選任に関する方針および手続きと併せて開示しています。

取締役のスキル・マトリックス(2024年6月19日現在)と取締役会への出席状況

取締役(監査等委員である取締役を除く。)

監査等委員である取締役

独立社外取締役の選任

当社は、社外取締役の独立性を実質面において担保するため、会社法に定める社外取締役の要件に加え、(株)東京証券取引所が定める独立性基準を踏まえて取締役会が別途定める社外役員の独立性判断基準を策定・開示しています。
また、取締役会における率直・活発で建設的な検討への貢献が期待できるよう、幅広い知識または高度な専門知識、高い見識、豊富な経験、および出身分野における実績を有する者を、独立社外取締役としています。

役員向けトレーニング

当社グループの中長期ビジョンの達成と持続的な企業価値向上を図るために、ガバナンス機能の向上、公正取引等の法令遵守に対する理解の深化、取締役会の実効性の確保を目的として、社内外取締役、執行役員向けに社内研修および外部講義の受講機会を提供しています。
具体的には、会社法、内部統制、リスク管理、コンプライアンス、危機対応や経営分析、財務戦略等の知識だけではなく、時宜的な最新動向をテーマに掲げ、実践的な社内講義を行うとともに、「ビジネスと人権」やサステナビリティ情報開示への対応など、サステナビリティの専門知識や技能に関しても外部講義を積極的に利用しています。

トレーニングメニュー例
  • 監査等委員会設置会社における取締役会運営
  • グループにおける取締役の法的責任と子会社不祥事への対応
  • これからのサステナビリティ開示への対応準備
  • CSRDへの実務対応 ~本社と欧州拠点はどのように役割を分担すべきか~
  • ビジネスと人権 ~取り組みを進めるからこそ直面する課題にどう向き合うか~

取締役会の実効性評価

当社は2015年度より、取締役会の実効性のさらなる向上を目的として、全役員を対象に実効性に係る自己評価アンケートを継続して実施しています。また、2023年度はアンケート結果を踏まえた第三者アドバイザーによるインタビューを実施しました。

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    2023年度実施概要

    2023年度は、第三者アドバイザーの意見も考慮した上で選定した、①「取締役会の構成と運営」、②「経営戦略と事業戦略」、③「企業倫理とリスク管理」、④「業績モニタリングと経営陣の評価・報酬」、⑤「株主との対話」の5つの大項目に関する17問の質問に加え、社外取締役のみによる議論の場の必要性と監査等員会設置会社移行後の取締役会等の運営に関するアンケートを実施しました。また、アンケート調査で得られた課題認識・コメントについて、明確化・深掘りすることに加え、改善策等について意見を得ることで、取締役会の実効性をさらに向上させるための施策を明確化させることを目的に、第三者アドバイザーによるインタビューを実施しました。

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    実効性の評価結果

    ⅰ. 概要
    アンケートおよびインタビュー結果を元に議論を行った結果、取締役会が適切に機能し、実効性が確保されていると判断しました。2023年度においては、特に①「取締役会の構成と運営」に関して、社外取締役に対して経営会議での議論内容を説明する機会を設けたことや、取締役会の付議内容に関する事前説明の場に議長が参加し社外取締役の視点を理解した上で取締役会の議事運営を行ったことにより改善がみられ、取締役会の実効性が向上しました。一方で、③「企業倫理とリスク管理」においては、社会的に倫理観が大きく変化している中では、社外取締役による外部の視点での発言が重要であり、取締役会としてもこのテーマにプロアクティブに取り組むことでさらなる体質改善を図っていく必要があることを認識しました。

    ⅱ. 2023年度の取り組みに関して

    • 監査等委員会設置会社への移行
      重要な業務執行の決定権限を業務執行取締役へ委任することで意思決定を迅速化するとともに、モニタリング機能の強化に取り組むために、当社は、2023年6月21日の定時株主総会における決議により、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行しました。また、本移行により、「中長期経営戦略」、「経営資源の配分」、「事業ポートフォリオ」、「サステナビリティ」、「重大リスクへの対応」といった企業価値向上につながる事項により時間を割いて審議することで、取締役会の実効性を向上させることを意図していました。その評価については、移行より1年と時間が限られており、十分な評価材料の蓄積がないとの意見もありましたが、否定的な意見はなく、さらなる実効性向上の途上にあるものと認識しました。また、新たな脱炭素戦略目標の設定や人材戦略等、中長期経営戦略やサステナビリティに関する事項について重点的に審議する時間を設けて議論を深めましたが、監査等委員会設置会社とした利点をさらに活かすためには、アジェンダの設定に改善の余地があると認識しました。

    • 2022年度に認識した課題「多様性・人材戦略等」について
      当社が2023年3月に発表した中期経営計画のCX戦略(人的資本のさらなる充実・グループ経営の変革・ガバナンスの強化)に基づき、当社グループの歴史とありたい姿、およびCX2030ビジョンと戦略の全体像を示したCX Story、ならびにアクションプランを作成しました。それらをもとに取締役会において議論を深め、提示された意見をもとにさらなる進化を図るよう、執行側に指示をしました。

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    2024年度の取り組み

    監査等委員会設置会社の特色を活かし、引き続き意思決定の迅速化を進めるとともに、モニタリング機能を一層強化していきます。改善の余地があると認識したアジェンダ設定においては、議題と討議時期の選定を慎重に行い年間計画をより明確にし、あらかじめ十分な議論の時間を確保することで、優先順位が高い事項に対して効果的に取り組んでいきます。特に、当社グループの財務状況や投資計画、市場の動向等を踏まえた資本政策、ロシア・ウクライナや中東での緊迫した情勢等により顕在化した地政学リスクに対する体制や、実効性評価で課題として認識された企業倫理とリスク管理等について、取り上げる予定です。また、2024年度末には、現行の取締役(監査等委員である取締役を除く。)等に対する業績連動型株式報酬制度の対象期間が満了するため、この機会に取締役等の報酬制度の改善を図るべく、新しい報酬制度について討議する予定です。

監査の体制

当社の監査等委員会は、独立社外取締役3名を含む5名(うち女性2名)で構成されていて、株主の負託を受けた独立の機関として取締役の職務の執行を監査しています。具体的には、監査等委員会が定めた監査等委員会規則、監査等委員会監査等基準に準拠し、監査方針、監査計画などに従い、内部統制システムの整備・運用状況、業務基盤の整備状況、経営計画諸施策の推進状況等について、重点監査項目を設定し、内部監査部門と緊密な連携を図りながら、計画的に日々の監査活動を進めています。また、取締役会など重要な会議へ出席するとともに、業務執行取締役および使用人などからその職務の執行状況などについて説明を求め、意見を表明しています。グループ会社については、その取締役または当社管掌部門などと意思疎通および情報の交換を図り、必要に応じて、事業の報告を受け、説明を求めています。さらに、グループ会社監査役などと連絡会などを通じて連携を図り、グループ全体の監査品質向上に努めています。また、監査等委員会の職務を補助しその円滑な職務遂行を支援するため、監査等委員会室を設置し、専任の事務局員として4名を配置しています。監査等委員である社外取締役は、各分野における豊富な経験や高い識見に基づき、取締役会、監査等委員会などの場において、それぞれ独立した立場から意見を述べ、主要な業務執行取締役や執行役員および会計監査人などからの報告聴取なども含む監査活動を行うことにより、当社の健全で公正な経営に寄与しています。

構成人数と監査役会/監査等委員会出席回数(2023年度)

会計監査について

当社の会計監査業務を執行した公認会計士は北村 嘉章氏、隅田 拓也氏、柴田 勝啓氏です。各氏はいずれも有限責任監査法人トーマツに所属しており、同会計士事務所の継続監査開始年度は2007年度3月期、各氏の業務執行社員としての継続監査年数は7年以内です。当社の監査業務に関わる補助者の構成は、公認会計士14名、会計士試験合格者など4名、その他54名であり、一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を行っています。
また、財務諸表監査および内部統制監査を受ける主要な海外連結子会社は、主として当社の監査公認会計士などと同一のネットワーク(デロイト トーマツ グループ)に属する会計士事務所を起用しています。
なお、監査等委員会は、会計監査人の評価に関する基準を定め、監査体制、独立性、職務遂行状況などの評価を実施の上、会計監査人の選任もしくは、毎年の再任、不再任を決定しています。

監査報酬の内容

株主との関係

当社は、議決権の尊重や株主の権利および平等性の確保、株主の利益に反する取引の防止および禁止など、株主との関係についてコーポレートガバナンス・ガイドラインに定め、公表しています。

利益相反・関連当事者間取引

当社は、当社役員と取引を行う場合、取締役会規則に基づき取締役会において決議し、当該取引後、重要な事実を取締役会において報告することとしています。また、当社取締役が役員を兼務する他法人との取引に一定の枠組みを定める目的で、取締役会は3カ月ごとに兼務状況の報告を受け、取締役が非完全子会社である他法人の代表取締役等に就任する場合は取締役会の承認を要することとし、特別利害関係人を幅広く捉え該当する取締役は、取締役会の決議に加わることができないものとしています。2024年3月末において議決権保有比率が総議決権の10%を超える株式を保有する主要株主は存在しませんが、今後主要株主との取引が発生する場合の取引条件等は、第三者との取引と同様に審議し決定します。
なお、コーポレートガバナンス・ガイドラインにも「株主の利益に反する取引の防止及び禁止」を定めています。

政策保有株式の保有方針

当社は、保有する政策保有株式を縮減する方針で取り組んでいます。2015年11月に制定したコーポレートガバナンス・ガイドライン第5条第2項に従い、取締役会において、毎年、個別の政策保有株式の保有につき、その目的・意義を、資本コストをベースとする収益目標と、配当金・取引状況や事業活動への効果等とともに総合的に検証し、削減に向けた取り組みを決定しています。結果として2016年度末に56銘柄保有していた上場株式は、2023年度末までに27銘柄減り、29銘柄になっています。
現時点で保有する政策保有株式は当社業績の安定に資する長期的な取引関係が見込まれる重要取引先等で、関係維持または強化のための手段の一つとして妥当と判断するものです。
政策保有株式に係る議決権の行使にあたっては、一定の基準に基づき、投資先企業の価値の毀損につながるものではないこと、および当社の企業価値向上への貢献の有無とその程度を確認の上、議案への賛否を決定しています。特に、以下2点については個別の基準を設け賛否の是非を検討します。

①剰余金の処分

  • 財務の健全性に大きな問題が生じないかどうか
  • 内部留保の適切な水準を著しく欠いていないかどうか
  • 配当性向などから株主還元として一定の評価が見込まれるかどうか

②取締役・監査等委員の選任議案

  • 過去3年間赤字かつ無配、さらに業績改善の傾向にないと見込まれているかどうか
  • 違法行為などの重大な不祥事で業績に一定の影響があり、かつ再発防止策・改善案などが適切に開示されていないとみなされるかどうか
  • 上記に該当する場合で、格別の考慮すべき事情がないかどうか

役員報酬

当社は、「役員等の報酬決定に関する方針」を定めるとともに、会社の業績等の適切な評価を、執行役員を兼務する取締役または執行役員等の報酬等に反映させることを「コーポレートガバナンス・ガイドライン」に明示しています。

業績連動型株式報酬制度

当社は、2016年度より、透明性・客観性の高い役員報酬制度である業績連動型株式報酬制度を導入しています。
2022年度より、ESG経営をさらに加速し、中長期的に株主との利害共有を図ることを目的に、株式報酬制度の内容を一部改定の上、継続しました。

業績連動型株式報酬制度の概要

業績連動型金銭報酬制度

当社は、短期的な業績達成へのインセンティブを高め、企業価値向上に資する仕組みとすることを目的に、基本報酬とは別枠で、「業績連動型金銭報酬制度」を2022年度より導入しました。

業績連動型金銭報酬制度の概要

取締役(監査等委員である取締役を除く。)等の報酬枠の概略図

報酬構成のイメージ図

業績連動型金銭報酬の支給および業績連動型株式報酬の交付などのイメージ図

役員報酬等の総額(2023年度)

報酬等の総額が1億円以上である者の報酬等の総額等(2023年度)