日本郵船「ツウ」の方へ挑戦する企業

日本郵船グループの曳船DXプロジェクト~未来の海運を支える革新~

プロジェクトのゴールツリー

日本郵船グループは、曳船事業の発展を支えるため、革新的なプロジェクト「曳船DX」を進めています。曳船とは、大型船の離着岸サポートする小型の船のことで、タグボートとも呼ばれます。一般にはあまり知られていませんが、曳船の役割は非常に重要で、仮に曳船が出せなくなった場合、物流が止まり、人々の生活に大きな影響が及びます。

本記事では、曳船DXプロジェクトが業務の効率化と現場の改善をどのように目指しているのかを紹介します。

曳船DXプロジェクトの背景と意義

日本は少子高齢化が進み、労働人口の不足が深刻な問題となっています。港の現場や船員も例外ではなく、曳船業界も同様の課題に直面しています。曳船が機能しなくなると物流が停止し、私たちの生活に大きな影響を与えることになります。そこで日本郵船グループは、ITを活用して曳船業界の課題を解決し、魅力的な職場環境を提供することを目指しています。

曳船事業のゴールツリー

取り組みの内容

まず、日本郵船グループの曳船事業会社にヒアリングを行い、現場の実態と課題を把握しました。その結果、以下の業務で大きな課題があることがわかりました。

<勤怠・労務管理業務の実態と課題>
曳船業務は多岐にわたり、作業対象や時間帯によって手当が異なるため、労務管理が複雑です。また、外航船のスケジュールに連動するため、勤務時間が不規則で、手当の計算も煩雑です。現場での「正確な」記録が必要であり、船上と陸上での確認作業も負担となっていました。

<点検業務の実態と課題>
運航記録や整備記録は紙で記録されており、陸上側に共有するまでにタイムラグが生じていました。リアルタイムでのデータ共有と透明性のある管理が求められていました。

これらの課題に対処するため、スマートデバイスを本船に導入し、以下の改善を図りました。

<勤怠・労務管理業務の改善>

協力会社のロゴ1

海事産業向けの労務管理システムであるTRANS-Crewをカスタマイズ(ベンダーであるAISと新たに曳船向けの給与計算機能を共同開発)し、従来のExcelでの労務データ管理をアプリに変更しました。これにより、船上で手軽に入力でき、労務データを迅速に共有できるようになりました。乗組員や事務担当者の負担が軽減され、給与計算業務が効率化されました。

TRANS Crew

<点検業務の改善>

協力会社のロゴ2

現場帳票管理アプリ「カミナシ」を運営するKAMINASHI社とともに北は北海道から南は沖縄まで、船内における紙帳票の電子化を目指しています。紙帳票を利用していた点検業務をアプリ上で管理するように変更し、船上での入力が簡単にする取り組みを進めています。また、データをクラウド上に保存することでリアルタイムでのデータ共有が可能となるほか、機器保守業務にも利用することで修繕や点検のデータ収集を簡易化し、トラブル防止に寄与することも目指しています。

点検データレポート画面

今後は「配乗管理のDX」や「船員育成のDX」にも取り組み、曳船業界をさらに魅力的な職場にすることを目指します。また、曳船DXのツールを他の現場にも展開し、海運物流業界全体の改善を図ります。

まとめ

日本郵船グループの曳船DXプロジェクトは、ITを活用して曳船業界の課題を解決し、効率的で魅力的な職場環境を提供することを目指しています。この取り組みは、海運物流業界全体の発展に寄与し、私たちの生活を支える重要なインフラを支えるものです。

今後もITを活用することで業務の効率化を図り、人々の負担を軽減しながら、健全な運営を実現するためのDXをさまざまな分野で推進していきます。