1. ホーム
  2. ニュースリリース
  3. 2015年
  4. 130周年節目の年 未来に向けて成長を続ける
    ―創業130周年、さらなる成長へ―
 
 

130周年節目の年 未来に向けて成長を続ける
―創業130周年、さらなる成長へ―

2015年1月5日

当社は2015年1月5日、東京都千代田区の本店15階ホールで商事始め式を開催し、社長の工藤泰三が新たな年にあたって次のあいさつを述べました。
 
皆さん、明けましておめでとう御座います。2015年の商事始めにあたり、一言ごあいさつ致したいと思います。
 
2015年に向けての概観】
さて、最初に、当社事業に大きな影響を持つ世界経済を展望したいと思いますが、北米は、雇用や住宅市場の回復に下支えされた個人消費が堅調に推移しており、2015年も拡大基調が続くことが見込まれます。欧州経済は依然デフレ懸念が拭えないものの、輸出の拡大や設備投資の持ち直しにより緩やかながら改善に向かうことが期待されています。また、中国は経済の構造改革を優先することでこれまでのような高い成長率は望めませんが、それでも7%前後の経済成長が予想されます。従って、その他地域も含め温度差はあるものの、世界経済は総じて改善傾向或いは成長軌道を維持しており、本年も荷動き量は確実に増加していくと考えられます。ところが、このように需要サイドでは拡大基調を維持しているものの、船腹の供給圧力はコンテナ船やバルクキャリアを中心に依然根強く、全体として需給ギャップが短期間のうちに解消する目途は未だ立っていません。この背景には、燃料費高騰により燃費効率に優れた船舶への代替需要が年々強まっていることや、世界的な低金利と資金余剰が投資目的による船舶建造を助長していること等があると考えられ、単純な需給関係だけでは説明できないような状況に陥っています。加えて、中東並びにウクライナ問題等の地政学的リスクや、大きな災害を引き起こす気象変動リスク、また為替や原油価格の不安定な動きなど、事業環境の不確実性は益々増しています。そうした中、グループ全体で安定した収益を計上していく為には、従前より取り組んでいる運賃安定型事業を重視した営業活動を継続すると同時に、運賃非安定型事業では市況耐性を重視した船隊構成、或いは “Cargo Long”の状態を常に維持し、その上でグループ全体の事業ポートフォリオの多様性確保にも心掛けることが求められます。更に、燃節活動を含む、業務のムダ・ムラ・ムリ、即ち3M解消活動を徹底的に展開することも必要不可欠です。幸い、2014年度もこれまでのところ順調に利益を積み上げてきており、通期で650億円前後の経常利益を見込んでいます。皆さんの努力に改めて感謝するとともに、今後も着実に事業と収益を拡大していく為、競合他社との差別化と競争力の源泉となる「きらり技術力」をそれぞれの持ち場で更に探求していきましょう。
 
【創業130周年を迎えて過去10年の振り返り】
さて、当社は郵便汽船三菱会社と共同運輸会社の合併により、1885年に創業し、今年で130周年の節目を迎えます。創業時の資本金は1,100万円、所有汽船は58隻でしたが、現在は2014年3月末の連結ベースで資本金1,443億円、運航船舶877隻の規模にまで成長しました。また、120周年を控えた2004年3月末と比べても、わずか10年の間に、売上高は1兆4000億円から2兆2000億円へとおよそ6割増加し、運航船舶も617隻からおよそ4割、260隻ほど増加しています。加えて、海運業のみならず物流事業や海洋事業等、新たなセグメントが着実に成長し、当社グループの事業ポートフォリオはより多彩で強固なものになっています。 
 
ここで、この10年間の変化を事業セクター毎にもう少し細かく見てみると、例えばコンテナ船は2004年3月末で131隻を運航していましたが、2014年3月には101隻となり隻数ベースでは2割強減少しています。アライアンスや航路の再編に合わせて最適な運航規模を追求した結果、船舶の大型化やそれに伴うカスケードによって老齢または燃費効率の悪いコンテナ船を処分でき、フリートマネジメントの効率化が進んだ為ですが、他方でコンテナの当社取り扱い本数を見てみると、過去10年間で264万TEUから385万TEUへと約5割拡大しました。その拡大の牽引役が三国間の貨物であることは言う迄もありませんが、現在の取扱高385万TEUの内、約8割にあたる300万TEU強を三国間貨物が占めています。また、従来のコンテナ海上輸送事業に加え、ターミナル事業やグループ会社である郵船ロジスティクス社を中心としたNVOCC事業等にも力を入れることで、一般貨物輸送事業全体での規模の拡大を図ると同時に、市況耐性も強化するという構造改革に全力で取り組んでいます。 
 
次に、不定期船事業の方に目を向けてみると、自動車船は2004年3月末に93隻の運航規模であったものが、2014年3月には125隻となり、この10年間で3割強の増加となりました。その間、積み台数は約240万台から360万台へと1.5倍に拡大しましたが、その内、日本からの輸出が150万台から160万台へと小幅な増加に止まっているのに対し、三国間輸送は90万台から200万台へと大きく伸びています。つまり、日本からの輸出は東日本大震災や円高といった逆風の影響で停滞を余儀なくされましたが、代わってタイやインド、インドネシアといった新興国からの輸出が増加し、自動車船事業全体の成長を支えた訳です。更に海上輸送の枠を超えて、自動車物流事業にも力を入れた結果、当社グループが運営する事業拠点は全世界37か所まで拡大し、2014年3月期の海外自動車ターミナルでの年間取扱い台数は630万台超と、海上輸送実績である360万台を大きく凌ぐ規模にまで成長しています。これには、以前にも述べた通り、電子タグやITソフト等を活用した高品質な付加価値サービスを、お客様のニーズに合わせて提供できたことも大きく寄与しています。
 
ドライバルク船隊もこの10年間で飛躍的に拡大しました。2004年3月末にケープサイズは71隻、パナマックス及びハンディサイズは合計145隻の運航規模でしたが、2014年3月にはそれぞれケープは129隻、パナマックス・ハンディサイズは286隻へと倍近い伸びを示しています。これは、21世紀に入り急速に拡大した中国・インド等の新興国の経済成長と、それに伴う様々なバルク原材料の海上荷動き増加に対応した結果です。例えば、NYKバルク・プロジェクト貨物輸送社のハンディサイズバルカーによる輸送実績を見ても、10年前は国内関連輸送が四分の三を占め、三国間は四分の一に過ぎなかったものが、現在ではほぼ半々にまで三国間の割合が増加しており、三国間需要の拡がりが業容拡大に貢献したことを裏付けています。ただ、残念ながら、現在のドライマーケットは船腹の需給ギャップが大きく、その調整にかなりの時間を要すると思われますので、収入サイドである貨物の契約期間と、費用サイドである本船の保有・用船期間とのギャップを解消し、市況変動の影響を受けにくい事業構造に早急に転換する必要があります。
 
エネルギー関連事業も大きく飛躍しています。当社が関与するLNG船の保有隻数は2004年3月末の28隻から、10年後には67隻へと2倍以上に、同じくタンカーも運航隻数は56隻から77隻へと4割近く増加しました。この背景には石油や天然ガスの需要と供給の多極化があった為ですが、加えて近年のいわゆるシェール革命によるエネルギー需給の構造変化もあり、その為、特に世界のLNG需要は今後も高い伸びを示すものと思われます。また、長年のLNG海上輸送で蓄積した技術と知見に基づき、10年前では考えられなかったLNGの上流及び中流権益にも海運会社として初めて参入を果たしました。更に、特筆すべきは海洋事業への挑戦です。2009年にブラジル沖でのドリルシップ事業に参画したのを皮切りに、翌2010年には邦船社初のシャトルタンカー事業に進出し Knutsen NYK Offshore Tankersを立ち上げ、現在は30隻近いシャトルタンカーを運航しています。加えて2011年には、浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備と呼ばれるFPSO事業にも参入しました。これらの新規海洋事業はいずれも高度な技術力と専門性の高い知見・ノウハウが求められるという、まさに「きらり技術力」の領域であると同時に、海外パートナーとの協業を世界中の様々な場所で展開していく必要がありますので、今後とも果敢に挑戦せねばなりません。
 
このように各事業部門における過去10年間の成長を振り返ってみると、成長の源泉はいずれも日本中心から急速に三国間や海外のビジネスにシフトしていることが分かります。もちろん、今後とも我々にとって日本市場が極めて重要であることに変わりはありませんが、これから先10年間の事業拡大のためには海外でのビジネス確保がいよいよ重要になってきています。  
 
【郵船のDNA】
さて、当社が誕生から現在まで浮沈の激しい海運業界にあって、且つ途中大きな戦争を経験しながらも、130年に亘って事業を継続してこられたことは正に我々の誇りとするところでありますが、これを根底で支え続けたものはやはり当社のグループバリュー「誠意・創意・熱意」であったと思います。事実、現在展開中である中期経営計画 “More Than Shipping 2018”もまた「誠意・創意・熱意」を尽くし、「きらり技術力」を御客様の視点に立った競争力のある「カイゼン提案」に具現化することで他社との差別化を図り、我々の成長を維持しようというものです。そして、その具現化を求められる場所の多くが、今後益々海外市場となる以上、当社グループのDNAである「誠意・創意・熱意」を世界中の組織全体に如何に深く浸透させることができるか否かが、我々の成長を左右すると言って過言ではありません。逆に、急速に拡大する世界市場においてこの挑戦に失敗すれば、当社グループの存続さえ危ぶまれるという強い危機感を、グループ全体が共有すべき時代に既に突入しているのです。我々が誇りとする130年という日本郵船の歴史は、今迄に積み重ねた「誠意・創意・熱意」の結果でしかなく、130年という歴史が今後のNYKグループの存続を保証するものでは一切ないということを強く認識せねばなりません。グローバル市場での我々の更なる挑戦が続きます。
 
【コンプライアンス関連】
最後にコンプライアンス関連についてお話を致します。2012年に端を発した独占禁止法違反関連調査の結果、昨年3月に日本の公正取引委員会から多額な課徴金納付命令を受けたのに続き、昨年末には米国司法省と司法取引の合意書を締結し、およそ59百万米ドルの罰金を支払う苦渋の決断を致しました。繰り返しとなりますが、我々は依然として部分的に独占禁止法からの適用除外が存在するという大変複雑な環境で事業を行っています。従って、今回の経験を決して風化させることなく、独占禁止法の規定をより正しく理解し、遵守することを徹底せねばなりません。また、独占禁止法のみならず、米欧を始めとする贈収賄取締法や、経済制裁国に対する取引規制など、当社のビジネスに関わる法規制等が世界規模で強化且つ厳格化されてきていますので、法務グループとも連携しつつ、これらに対するリスク管理の徹底にも万全を尽くさねばなりません。
 
最後になりましたが、皆さんとご家族にとって、2015年が素晴らしい一年となりますよう心より祈念して、私の新年のあいさつと致します。 
 

以上

掲載されている情報は、発表日現在のものです。
その後、予告なしに変更される場合がございますので、あらかじめご了承ください。