共同リリース

液化CO₂輸送船と浮体式液化貯蔵設備を開発、AiP審査完了

ENEOS Xplora株式会社
日本郵船株式会社
Knutsen NYK Carbon Carriers AS
一般財団法人日本海事協会

コストと敷地面積を大幅削減し、CCUS実現に向け前進

日本郵船株式会社(以下「日本郵船」)とKnutsen Groupの関連会社であるKnutsen NYK Carbon Carriers AS(クヌッツェン・エヌワイケイ・カーボン・キャリアーズ、以下「KNCC」)はこのたび、常温で液化二酸化炭素(LCO2)を貯蔵、輸送する常温昇圧(EP)方式を用いてLCO2を輸送するLCO₂船(以下「LCO₂ -EP船」)を開発しました。一般財団法人日本海事協会(以下「ClassNK」)は、鋼船規則「N編」(注1)などに基づきこれを審査し、所定の要件を満たしていることを確認したことから基本設計承認(AiP)(注2)を発行しました。

LCO2-EP船は、KNCCが開発した「LCO2-EP Cargo Tank(注3)」技術を用い、LCO2を安定した状態で輸送します。LCO2を氷点下まで冷やす必要が無いため取り扱いが容易で、液化時のエネルギーとコストを削減できる可能性があります。

さらに、日本郵船とKNCCおよびENEOS Xplora株式会社(エネオス・エクスプローラ、以下「ENEOS Xplora」)は、「LCO2-EP Cargo Tank」技術と、共同で検討してきた液化方式であるジュール・トムソン冷却方式(注4)を組み合わせた浮体式液化貯蔵設備(FLSU、以下「本FLSU」)を開発しました。ClassNKは鋼船規則「PS編」(注1)「浮体式海洋液化天然ガス及び石油ガス生産、貯蔵、積出し、再ガス化設備のためのガイドライン」などに基づく審査の上、AiPを発行しました。

本FLSUは、陸上設備で集積したCO2を回収して浮体上で液化し、LCO2船で輸送するまでの間、浮体内に貯蔵するという先進的なコンセプトを採用しています。液化に要するエネルギーを削減できる可能性のあるEP方式の特徴を活用し、従来の冷却方式に比べシンプルかつコンパクトになると予想されるジュール・トムソン冷却方式を採用することで、浮体式設備への搭載が可能になりました。
CO₂を回収し、利用、貯留するCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)(注5)は、カーボンニュートラル社会を目指すうえで重要な技術ですが、コスト低減や、液化、貯留設備のための敷地の確保などの課題があります。本FLSUを活用することで、CCUSバリューチェーンにおけるCO2液化のコストと陸上敷地面積が削減され、CCUS実現に向けた可能性を広げます。

引き続き各社は、CCUSバリューチェーン構築に向けて各種技術検討や経済性・安全性評価に尽力し、カーボンニュートラル社会の実現に向けて貢献していきます。

AiP授与式の様子
前列左から
日本海事協会 常務理事 松永昌樹
ENEOS Xplora取締役 副社長執行役員 山田哲郎
KNCC Director Synnøve Seglem
日本郵船 執行役員 横山勉
後列左から
日本海事協会 技術本部 船体部部長 宇佐美陽生
ENEOS Xplora CCS事業推進部長 深山道隆
KNCC Deputy Director Jorunn Seglem
NYK Group Europe Norway Managing Director Anders Lepsøe
KNCC CEO Oliver Hagen-Smith
KNCC Director Jarle Østenstad

FLSUイメージ図

FLSUを用いたハブ構想

各社コメント

ENEOS Xplora株式会社 取締役 副社長執行役員 山田 哲郎
FLSUコンセプトは、CCUSの実現に向け、多くの排出事業者が抱える土地利用の制約や液化に伴うコストといった課題を解決する一助となることを目的に開発されました。昨年8月には、3社共同でジュール・トムソン冷却方式による液化の実証試験に成功し、今回このコンセプトに対して基本設計承認を取得しました。これにより、私たちはこの革新的なコンセプト、ひいてはCCUSの社会実装に向け、また大きな一歩を進めることができました。当社は今後も、日本郵船およびKNCCとのコラボレーションを通じて、CO2の大規模輸送分野の最適化に取り組むと共に、サステナブルな社会の実現に貢献すべく、CCUSを軸とした多様な事業展開を探求してまいります。

日本郵船株式会社 執行役員 横山 勉
2024年8月にCO2の液化実証実験に成功し、社会実装に向けてさらなる検討を続けてきました。 本FLSUは、CCUS事業化の課題となる液化貯蔵プロセスのコスト・陸上敷地面積の削減に大きく寄与する、ゲームチェンジャーとなる可能性があると確信しています。 この成果を基に、今後もENEOS Xplora、KNCCとの連携を強化し、日本国内外のCCUS事業化推進を通じた脱炭素社会の実現に向けて尽力してまいります。

Knutsen NYK Carbon Carriers AS CEO Oliver Hagen-Smith
今回の成果とENEOS Xploraとの継続的な協力関係を大変うれしく思っています。本FLSUの設計は、日本の規制および設計条件に基づいており、世界の様々な場所で展開可能なEPバリューチェーンの柔軟性、適応性、拡張性を示しています。
EP液化プロセスの実証実験が完了したことで、EPバリューチェーンの活用だけでなく技術的にも確固たる基礎を得ることができました。LCO₂-EPカーゴタンクとEP液化プロセスを組み合わせたこのFLSUコンセプトは、KNCCとそのパートナーが、世界のCCUS産業に対して最適で、経済的、柔軟かつ多様なソリューションを提供することで、CCUS実現の可能性拡大に貢献することを象徴します。

一般財団法人日本海事協会 常務理事 技術本部長 松永 昌樹 
3社の先進的な取り組みに対しAiPを発行できることを光栄に思うとともに、関係者の皆様のご尽力に敬意を表します。
従来陸上で行なっていたCO2の液化・貯蔵を船上で行なうという革新的なコンセプトに対し、本会は、液化ガス船や海洋構造物の設計審査などで得た知見を活かして本船および本貯蔵設備の審査を行い、技術的な実現可能性を確認しました。
引き続き、CCUSバリューチェーン構築のためのカギとなりうる本ソリューションが安全に社会実装されるよう、貢献してまいります。


<ENEOS Xplora株式会社>
本社: 東京都千代田区
代表者:代表取締役社長 中原 俊也
ウェブサイト:https://www.eneos-xplora.com/

<日本郵船株式会社>
本社: 東京都千代田区
代表者:代表取締役社長 曽我 貴也
ウェブサイト:https://www.nyk.com/

<Knutsen NYK Carbon Carriers AS>
本社:ノルウェー・ハウゲスン
代表者:Oliver Hagen-Smith, CEO
ウェブサイト : https://www.kn-cc.com/

<一般財団法人日本海事協会>
本社: 東京都千代田区
代表者:会長 菅 勇人
ウェブサイト:https://www.classnk.or.jp/


(注1)鋼船規則
ClassNKが船舶の構造や設備などに関する要件を定めた規則。「A編」から「X編」まであり、「N編」は液化ガスばら積船、「PS編」は浮体式海洋石油・ガス生産、貯蔵、積出し設備について定めたもの。
(注2)基本設計承認(Approval in Principle : AiP)
船級協会などの認証機関が基本設計を審査し、技術要件や安全性の基準を満足すると承認されたことを示すもの。
(注3)LCO2-EP Cargo Tank
常温昇圧(0~10℃、34~45気圧[barG])で液化 CO₂を輸送するためにKNCCによって開発されたタンク。
(注4)ジュール・トムソン冷却(Isenthalpic expansion cooling and liquefaction)方式
回収したCO₂を減圧することで生じる温度低下を利用し、船舶輸送に適するLCO₂を生成する方式。
(注5)CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)
火力発電所や工場などから排出されるCO₂を回収し、そのCO₂を作物、化学薬品、建設資材などの生産工程で利用するか、安定した地下の地層に貯留すること。

以上

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