プレスリリース

未来へ共創、環境にも人にも優しい電気推進タグボートの建造決定

日本初の国内メーカー製モータードライブシステムを搭載


 当社はこのたび、リチウムイオンバッテリーを搭載した電気推進タグボート(以下、「本船」)の建造を決定しました。本船は、当社が概念設計を行い、当社グループの京浜ドック株式会社(以下「京浜ドック」)で建造し、当社グループの内海曳船株式会社(以下「内海曳船」)が2026年末に運航を開始します。タグボートの電化は、再生可能エネルギー由来の電力を直接利用することができる、将来のカーボンニュートラルポートの実現に資する技術です。また、電気推進船の高い操船性と船舶定点保持システム(以下「DPS」)の搭載により、船員の作業負荷を低減します。当社グループの総力を結集して建造・運用する本船は、環境にも人にも優しい「ミライのタグボート」として、国内海事産業の次世代への発展を牽引します。

 電気推進船では、パワーエレクトロニクス技術を利用したドライブ装置とモーターによる駆動方式(図参照、以下「モータードライブシステム」)を使用しますが、これまで舶用向けでは国産化が進んでいませんでした。今回、当社は、業界トップクラスのパワーエレクトロニクス技術を有するモータードライブメーカーである株式会社TMEICと協議を重ね、本船向けに新規開発される、同社製大容量高効率リラクタンスモーター(約2200PS)(注1)と小型水冷ドライブ装置(注2)を採用します。これによって本船は、電気推進の基幹技術であるモータードライブシステムを国内メーカーで完結している日本初の電気推進タグボートとして、国産海事産業全体の強化へも貢献します。

(図)電気推進システムにおけるモータードライブシステム


 本船には、国内のタグボートで初めてDPSを搭載します。タグボートは運航中に数時間にわたり洋上で定点待機する「沖待ち」が発生することがあり、乗組員は船体位置を保持するための微調整を手動で繰り返す必要がありました。DPSの採用により、本船は自動で一定エリアに留まることが可能となり、乗組員の心理的負担を軽減します。この取り組みは、国土交通省の「内航変革促進技術開発支援事業」の対象事業として採択されており、当社は京浜ドックおよび内海曳船と共同で技術開発を進め、乗組員の労働環境改善に努めます。

 モータードライブシステムの国産化を含む本船の開発は、当社工務グループがシステムインテグレーターとして主導し、運航プロファイル分析を行い、要求される性能を満たす最適な船型を開発しました。これを基に京浜ドックが建造を進め、詳細設計や建造工程で得られた知見は工務グループへ還元されます。就航後は内海曳船が運航体制の最適化やメンテナンスマニュアルの作成などの知見を蓄積します。設計と建造、運航までの船舶バリューチェーンの全工程を当社グループで完結し、電気推進船に必要なあらゆる知見・ノウハウを集積していきます。将来的には、蓄積した知見を広く海事産業へ還元し、人手不足や脱炭素といった日本が抱える社会課題の解決への貢献を目指します。


注1)永久磁石モーターと異なり、リラクタンス(磁気力)で回転するモーター。レアアースを使用しないため、省資源化が可能。PSは馬力の単位。
注2)バッテリー等の直流電圧を、モーターに必要な交流電圧に変換する装置。パワーエレクトロニクス技術を採用しており、技術開発のハードルが高い。

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