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創業139周年記念式典で社長があいさつ

当社は10月2日、本店15階ホールで創業139周年記念式典を開催し、代表取締役社長曽我貴也が当社グループ社員に向けてあいさつをしました。

当社社長の曽我



皆さん、おはようございます。
本日こうして皆さんと共に、創業139周年を迎えることができ大変うれしく思います。全ての日本郵船グループ社員の日ごろからの頑張りに感謝するとともに、これまでの歴史の中でいくつもの困難に直面しながらも必死に乗り越えてきた多くの先輩方のご尽力に心から敬意を表します。

創業記念日の節目にあたり、幾つかお話しさせていただきます。

当社を取り巻く環境

まず我々を取り巻く環境についてお話しします。
ようやく世界はコロナ禍を脱し経済活動も以前の状況に戻ったといえますが、一方でコロナ禍の期間に各国政府が行った金融緩和政策を背景に大量の資金が株式市場に流れ込み、過熱的な株価上昇をもたらしたり、あるいは各国の政策金利の違いに起因して過度の円安を生んだりと、実体経済とは異なる水準で、金融市場にて極端な売り買いがなされている昨今の状況は、私たちの企業活動には大きな影響を与えています。また、世界のさまざまな分野で深刻化している「対立と分断」の構図は、経済圏の分断にも重なって自由経済の危機をもたらし、いわゆる地政学リスクの顕在化とともに、私たちの企業活動の安全性を脅かすものとなっています。国内の環境においても、人手不足は全産業の共通語となっていますが、当社グループにおいても事業展開に欠かせない船員や技術者の確保が深刻化し大きな課題となっています。
このような、これまでとは異なる、時代のうねりとも言うべき大きな環境の変化に直面しつつも、私たちがやるべきことは、個々人が常にアンテナを高く張り風向きに敏感になること、それぞれの事業や業務を遂行する上での道標(みちしるべ)としている仮説を必要あれば大胆にかつスピーディーに修正していくこと、そして当社グループが一体感を持ってチームワークを発揮することです。

中期経営計画の進捗

私たちにとっての大きな道標(みちしるべ)の一つが、今年2年目となっている中期経営計画(以下、中計)です。おさらいとなりますが、中計での重要なポイントは、ESG経営またはサステナビリティ経営を土台として中核事業を深掘りするという意味で深化させ、そこで得た資金を源に新規事業を発展させ、企業価値のさらなる向上を目指すということです。その支えとして、一人一人の社員が個性と能力を生き生きと発揮できる環境を整えるとともに、イノベーティブな発想とデジタルな業務手順を確立し、また社会の要請でもあるエネルギー転換に対して海運・物流会社としての貢献をしっかりと行っていくということです。
現中計のこれまでの進捗を振り返ると、制裁法に絡む可能性のある事業からの撤退や事業体制の見直しといった「仮説の修正」を加えつつ、他の分野での事業買収や新造船発注への必要投資も計画通り進み、中核事業の深化に繋がっています。また新規事業の展開についても、特に脱炭素に関わる分野において、「共創」というキーワードの下、造船所・舶用機器メーカー・海外パートナー企業・自治体・顧客・メディア等を巻き込んで徐々にその成果物を世に出しつつあります。またエネルギー転換という点でもNYK Group Decarbonization Storyで発表した野心的なGHG排出削減目標に向かって全本部があらゆる知恵を絞り、うまくそのスタートを切ったと言えると思います。
今年からスタートしたEU-ETS(欧州連合排出権取引制度)では、ESG戦略本部が中心となりしっかりその準備にあたってくれたことで対応できていますが、さらにFuelEU Maritimeという制度が来年からスタートします。いよいよGHGの排出がコストとなり、舵取り次第では収益を大きく棄損するリスクがあります。私たちの全フリートの中ではまだ数は少ないものの、他船社に先行して行ってきた船舶燃料の転換が制度上優位に働くものと見込んでおり、中計での仮説は正しいものと評価しています。

強化したいこと

一方、「仮説の修正」というよりも「強化」という位置づけにあるのが、「人」と「技術」に関わる分野です。「人」については、世界中の3万5千人の仲間一人一人が個性と能力を発揮して生き生きと働ける体制の整備、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を海外を含むグループ全社に浸透させるための考え方の整理と啓蒙といった取り組みが急ピッチで行われています。また、私たちの企業活動における競争力の源泉である海技者の位置づけ・モチベーション向上に向けたCX NEO(注)の活動も進んでいます。
「技術」についても、脱炭素に向けた当社グループの技術力は海運業界でもトップクラスだと自負していますが、一方で事業拡大に合わせていつも追加人員が確保できるというわけではないことを考えると、「省人化」というのも私たちの技術力の対象として重視する必要があります。それを支えるのがDX(デジタルトランスフォーメーション)であり、陸上のオフィス、海上の現場、そして倉庫のような物流の現場でも、限られた人員で質の高い業務が進められるよう取り組んでいきましょう。既に、高度な海陸間通信の整備、自律運航船の検証、造船所とのコラボレーションによるシミュレーション技術の研究、配送ロボット等を取り入れた自動化倉庫の設置など、「省人化」にかかわるさまざまな施策を開始していますが、一人一人の業務の中でも「省人化」の意識を持って業務プロセスの見直しを常に考えてもらいたいと思います。
他方、DXの深化に比例して増大するのがサイバー攻撃のリスクです。会社としてグループ全社の防御機能を高める努力を継続するものの、最終的には私を含め一人一人の意識と注意力が砦となることを忘れないようにしましょう。
資本政策も中期経営計画のもう一つの大きな柱の一つです。特に還元政策では、計画以上に積み上がった利益を、投資とのバランスを考え、しっかりと還元すべく修正を重ねています。株主はもちろん、重要なステークホルダーである社員の皆さんにも、賃金のみならずしっかり対応していきたいと思っています。
昨日、日本では新内閣が発足しました。イスラエルはレバノンに侵攻し、イランはその報復でイスラエルにミサイルを発射し、中東情勢はさらに混迷を極めています。また、来月のアメリカ大統領選挙の先の世界の流れがどういう風になっていくのか、そういったことも非常に不透明な状況です。
こういった時代の大きなうねり、取り巻く事業環境の変化はありますが、かつての先輩たちと同様に、明るく、大胆に、そしてしなやかに、誰一人取り残すことなく皆でこの荒波を乗り切っていきましょう。そして、来年の140周年を元気に迎えましょう。

以上、今日は少々マクロ的な話になりましたが、私の創業記念日のあいさつとさせていただきます。ありがとうございました。


注:海技者を対象にした社内プロジェクト。海技者がより前向きに会社人生を歩むことができるように「海技者の働き方」「キャリアパス」「船内環境」など、多面的に海技者を取り巻く課題を洗い出し、検討・改善することで、海技者の離職率を抑え、中期経営計画達成をCXの面から支えてゆくもの。

以上

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