ゼロエミッションに向けた移行計画について日本の海運会社を代表して提言
当社は、6月5日にオスロ(ノルウェー)で開催された「High-Level Meeting on Ocean: Global Shipping in the midst of a Just Energy Transition」 (以下「同会議」) ※ に日本の海運会社・民間企業として唯一、参加しました。
※当社意訳「海洋に関するハイレベル会議 : “公正なエネルギー移行”の只中(ただなか)にあるグローバル海運」
同会議は国連グローバル・コンパクト(United Nations Global Compact、以下「UNGC」、注1) とノルウェー政府が共催し、各国の大臣級、海運業界各社首脳や専門家などが参加する国際会議です。世界の海運業界をリードする第一人者の間で重要課題を共有し、その課題の解決に向けた実効性ある行動指針と施策を議論するために開催されました。
同会議にはUNGCのサンダ・オジャンボ(Sanda Ojiambo)事務次長補、ノルウェーのビョルナル・シャーラン(Bjørnar Skjæran) 漁業・海洋政策大臣、国際海事機関(International Maritime Organization、以下「IMO」)のキタック・リム(Kitack Lim)事務総長など、UNGCの要請を受けた国際機関、国際非営利団体、各国の政府機関、大学、海運会社、舶用機器メーカー、金融機関、船級協会などから、UNGCから招待を受けた65名が出席しました。
同会議では海運業界の脱炭素化や、脱炭素対応に伴う「公正な移行」(注2)などの重要課題への対応が議論され、当社からは執行役員 髙橋正裕が以下の点を発信・提言しました。
- 当社が船舶のゼロエミッション燃料の候補と目されているアンモニアの社会実装に世界に先駆けて取り組んでいること
- 海運業界の脱炭素化を加速させるためには1.5度目標(注3)に整合した政策フレームワークをIMOで早期に実現させる必要があること
- またバイオ燃料などのドロップイン燃料やアンモニアなどのゼロエミッション燃料の十分な供給が必須で、特にエネルギー業界や政府を巻き込んだ産業横断の協創を促す政策フレームワークも必要であること
当社は今後も脱炭素化や「公正な移行」など、海運業界が直面する重要課題の解決に向けた議論をリードしていきます。
日本郵船グループは、中期経営計画 “Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -
”を2023年3月10日に発表しました。“Bringing value to life.”を企業理念とし、2030年に向けた新たなビジョン「総合物流企業の枠を超え、中核事業の深化と新規事業の成長で、未来に必要な価値を共創します」を掲げ、ESGを中核とした成長戦略を推進します。
前列左端 : 当社執行役員 髙橋正裕
発言する当社執行役員 髙橋正裕
補足情報
同会議の議題
- 海運業界の脱炭素化のために必要と考えられる科学的、野心的かつ確かな手段
- 燃料供給インフラ、エネルギー効率対策、新技術など、低・脱炭素燃料を迅速に拡大させるために必要と考えられる要素
- 2050年までにゼロエミッションを達成するための取り組みで期待される機会と懸念されるリスク
- 政府、海運会社、投資家、銀行や保険会社など、公共セクターや民間事業セクター、民間金融セクターに期待される役割
- 燃料生産者や技術および再生可能エネルギー供給者に期待される役割
- 船主や傭船者へ2030年や2040年の目標設定と、設定された目標に沿った移行計画の策定を促す仕組み
- 雇用やスキル開発など、海運業界が脱炭素対応を進める中で誰も取り残さない「公正な移行」を実現するための方法
同会議で確認された点
- 全世界の貿易量の90%を担い、温室効果ガス(以下「GHG」)排出量の約3%を占める海運業界は、世界の脱炭素化に大きな責任を負っていること
- 海運業界が2050年までにGHG排出量をゼロにする目標を実現するためには1.5度目標に整合した2030年や2040年の目標とそれに沿った移行計画を各社が策定する必要があること
- 移行計画の指針、目標や移行計画への科学的な検証が必要であること
(注1) 国連グローバル・コンパクト
国連グローバル・コンパクト(UNGC)は、国連と民間(企業・団体)が手を結び、健全なグローバル社会を築くための世界最大のサステナビリティ イニシアチブです。UNGCは人権の保護、不当な労働の排除、環境への対応、そして腐敗の防止に関わる10の原則を提唱しており、当社は2006年に賛同を表明、社会の良き一員として行動し持続可能な成長を実現するための自発的な取り組みを推進しています。当社は2022年6月に日本企業では初めて、UNGCによる「Sustainable Ocean Principles (持続可能な海洋原則)」に賛同しました。
(注2) 公正な移行
公正な移行は、労働者や地域社会の利益や権利を尊重しつつ、持続可能なエネルギー・産業の変革を進めることを目指す考えです。公正な移行では、具体的に以下のような要素が考慮されます。
- 雇用の確保と創出:労働者の雇用を守りつつ、新たな持続可能な産業の創出を促進する。
- 適切な訓練・教育:労働者に対して、新しい技術やスキルを習得する機会を提供し、持続可能な産業への移行に対応できるよう支援する。
- 社会的包摂:持続可能な産業への移行に際して影響を受ける労働者や地域社会を支援し、誰もが恩恵を享受できるようにする。
(注3) 1.5度目標
21世紀末の世界平均気温を産業革命の前と比べて1.5度程度の気温上昇に抑える目標。
2015年に策定されたパリ協定では「気温上昇を2度を十分に下回る程度に抑え、1.5度に近づくように努める」として努力目標と位置付けられました。2021年の気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)では「世界の気温上昇を1.5度にとどめる努力を追求すること」に世界の国・地域が合意し、1.5度目標が国連気候変動枠組条約(United Nations Framework Convention on Climate Change、UNFCCC)締約国の事実上の目標となりました。
参考
関連プレスリリース
今回の取り組みが特に貢献するSDGsの目標
以上
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その後、予告なしに変更される場合がございますので、あらかじめご了承ください。