―次の30年を見据え、中計の着実な遂行とグループガバナンス強化を―
当社は2019年1月4日、東京都千代田区の本店で商事始め式を開催し、社長の内藤忠顕が新たな年にあたりあいさつを述べました。
<あいさつの要旨>
皆さん、明けましておめでとうございます。今年、日本は改元の年を迎えます。ここで平成の30年を振り返るとともに、次の30年の展望についてお話しします。
1.過去の30年の振り返り
30年前の1989年にベルリンの壁が崩壊し東西冷戦が終結して以降、矢継ぎ早に地域経済統合が続きました。NYKグループは世界貿易の拡大に歩みを合わせ、総合物流の展開と事業の多角化を進め、1989年のNYK Line(Europe)社設立を皮切りに世界各地に現地法人を設立するほか、ロサンジェルスを始めとする各地に物流センターを開業しました。客船事業に再進出したのも1990年でした。2017年度連結実績は、1989年比較で売上高3.4倍、自己資本2.5倍、連結会社数13倍、従業員数4倍と大変な勢いで、グローバル化と多角化、そして事業の拡大を成し遂げてきたことが分かります。
2.次の30年の展望
国連は2017年時点の世界の人口76億人が約30年後の2050年には98億人になると予測しており、アジア・アフリカの増加が著しく、なかでも3億人が増加するとされているインドは、中国を上回り世界で最多の国となります。気候変動については、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)による第5次評価報告の中位ケースの予測では1996年前後に比較し2050年前後には1~2度の気温上昇となり、世界各地での異常気象、北極海の海氷やサンゴ礁など水環境への悪影響、農作物への影響が不可避と言われています。また、ITやバイオテクノロジー等の分野における進歩は著しく、我々の生活を一変する勢いがあります。30年後には 予想もしなかった世界が広がっている可能性もあります。
このような先が見通せない次の30年を考えると、NYKグループの在り方をこれまでのものから大きく変える必要を感じています。社会や事業環境の変化に柔軟に対応すること、そのために、女性活躍やグローバル人事の推進などより一層の多様性促進を意識することが重要です。物流が我々の主たる事業であることに変わりはありませんが、いたずらに規模を追うだけではなく 周辺事業やソフトウェアビジネスへの注力、ニッチ業務の開拓にも目を向ける必要があります。
3.2019年の展望
次の30年を見据えるなかで、我々NYKグループが2019年にどういう方向に進むべきかという観点で、お話ししたいと思います。
中期経営計画の遂行
まず、我々のすべきことは、昨年3月に発表した中期経営計画“Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green”を遂行することです。その3つの基本戦略に今一度立ち返ってみましょう。
最初のステップである「ポートフォリオの最適化」では、ドライバルク事業の抜本的見直しとコンテナ船事業統合会社(ONE)の成功を2つのキーとして挙げました。ドライバルク事業は、関係する皆さんの努力と市況の好転が相まって、着実な改善を見せています。コンテナ船事業統合会社は、残念なことに昨年10月に業績予想の大幅な修正を余儀なくされましたが、改善への諸施策を着実に実行し、市場からの信頼回復につなげてもらいたいと考えます。
次に第二のステップ「運賃安定型事業の積み上げ」では、物流事業の強化、自動車船・自動車物流事業の強化とLNG・海洋事業の強化を掲げました。物流事業では、郵船ロジスティクス株式会社が、NYKグループの中核として、活躍・成長していくための取り組みが進みました。自動車物流では、海外での完成車専用ターミナルの建設や完成車鉄道輸送事業会社設立を決定し、LNG・海洋事業においては国内外の顧客とLNG船やシャトルタンカーの定期傭船契約を新たに締結するなど、運賃安定型事業を着実に積み上げてきました。 今後もこれらの成長促進事業と重点投資事業を中心に、安定的な収益構造を確立できるよう頑張ってもらいたいと考えます。
最後のステップ「効率化と新たな価値創出」では、中期経営計画のサブタイトルでもある“Digitalization and Green”への取り組みを挙げています。昨年は、エンジンの燃焼室内診断ソフトウェアや機関事故を防ぐ潤滑油の中の水分アラームなどの開発、船舶安全管理システムの25年ぶりの大幅な改定、船上キャッシュレスシステムの事業化検討など、我々の持つ技術をビジネスにつなげることを進めた1年でした。また5月には、資金の使途を環境改善効果のある事業に絞ったグリーンボンドを外航海運業界において世界で初めて発行し、我々の環境に対する取組姿勢をステークホルダーの皆さまに認知いただくよい機会になったと考えています。そして、11月に発表した環境コンセプトシップ「NYKスーパーエコシップ2050」は、我々の知見の結集であると同時に夢の結晶でもあります。この船に採用した環境技術の開発と継続的な実船採用に今後も取り組み、企業価値・社会価値の持続的創出を目指しましょう。
“Digitalization and Green”への取り組みは、すべて国連や経団連などが推進しているSDGs(Sustainable Development Goals)、すなわち、社会の持続性への貢献にもつながっています。モチベーションを高く持ち、半歩先を歩んでいきましょう。
グループガバナンスの再構築
昨年グループ会社を対象とした緊急総点検活動において発見された事案に対しては、必要に応じて専門家も起用し、関連部門を中心に是正措置を講じています。今年は、本年1月1日付で設置したガバナンス強化グループを十分に活用し、グループガバナンス体制の再構築を進めます。ステークホルダーの皆さまからの信頼を得るには、より効率的で強固なグループ体制の構築が不可欠です。ガバナンスが全ての事業活動の基盤にあると肝に命じ、一歩ずつ進んでいきましょう。
<終わりに>
NYKグループの歴史は、長い間に培われたグループ社員の「誠意・創意・熱意」、すなわち、NYKグループ・バリューによって育まれたものです。グループ・バリューを胸に新しい時代を切り開いていきましょう。
以上
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