2014年商事始め式で社長あいさつ
―人間力を高め、ブルーオーシャンを開拓しよう―
2014年1月6日
当社は2014年1月6日、東京都千代田区の本店15階ホールで商事始め式を開催し、社長の工藤泰三が新たな年にあたって次のあいさつを述べました。
皆さん、明けましておめでとうございます。2014年の商事始めにあたり、一言ごあいさついたします。
「2013年の振り返り」
2013年の当社事業を振り返りますと、一部の船種で夏場以降、需給ギャップ解消の兆しが見え始めましたが、全体としては依然大きなギャップから抜け出せず、低調なマーケットと高止まりする燃料価格に苦しめられた1年だったといえます。ただ、このような状況にもかかわらず、前年度には黒字復帰を果たし、今年度上期も256億円の経常利益を計上できました。これは、当社の長期安定重視の営業活動もさることながら、グループが一丸となった燃節活動を含む、業務のムダ・ムラ・ムリ、すなわち3M解消活動の積極的な展開のおかげです。あらためて、皆さんの努力に感謝します。
加えて、文字通り“More Than Shipping”の領域であるオフショア関係の事業が収益に貢献し始めてくれたことも一因であり、大変うれしく、また心強く思っています。
「More Than Shipping 2013の振り返り」
さて、“More Than Shipping 2013”は、本年3月までの中期経営計画ですので、最終段階を迎えた今、新年のあいさつに代えて少し総括したいと思います。リーマン・ショックの後、従前の船さえあれば儲かるという異常なマーケットが一変し、当分の間大きな需給ギャップの解消が望めない中、いかに生き残り、今後の成長を維持するかの指針として生まれたのが、“More Than Shipping”でした。“More Than Shipping”とは、船以外の分野と、船であっても、単純ではなく極めて高い操船技術や安全基準を求められる、参入障壁が高い特殊船の分野を強化するとのメッセージを込めたネーミングでした。まず、その特殊船にあたるドリルシップやFPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)は、冒頭でも触れた通り、当初から高稼働率を維持し、既に収益に大きく貢献しています。FPSOに関しては、さらに2基の新規案件を受注済みですので、今後収益の上積みが期待されます。また、シャトルタンカーのKNOT社(Knutsen NYK Offshore Tankers AS)も当初は若干苦戦しましたが、順調に長期契約を積み上げ、さらに子会社の米ニューヨーク証券取引所への上場もあり、本年度黒字転換を達成。完全にテイクオフしたといえるでしょう。
同じく特殊船の位置付けであるLNG(液化天然ガス)船関連事業においては、従来の海上輸送の枠から飛び出し、豪州のガス田や北米のシェールガスなどの、上流・中流部門での事業にも参画を果たしました。この事業自体で、高い収益性を見込めるだけでなく、LNG船事業拡大とのシナジーが期待できるという点でも重要です。新規案件が収益面で貢献するには、今後数年以上を要するでしょうが、これらオフショア関連事業が、既に当社の長期安定コアビジネスに成長したことは、今回の“More Than Shipping”の最大の成果の一つであったといえるでしょう。ところで、オフショア関係事業の各案件は投資額が極めて大きく、競争力のあるファイナンスが欠かせませんが、この点でも皆さんが高い人間力を遺憾なく発揮してくれたことが、大きな支えとなっています。
「船以外の分野の取り組み」
一方、船以外の分野とは、文字通り船に無関係という意味と、船をいかに使うかというソフト面の意味がありました。前者の最大分野は何といっても物流関連事業になります。最大の需給ギャップを抱えるコンテナ船事業が、当分の間し烈な競争を避けられない中、他社との差別化を陸上部門で図る目的と、顧客の求める全ての物流ニーズに対応でき、アジア諸国を中心に大きな成長を見込めるのは、やはり物流事業だとの位置付けで力を入れてきましたが、2011年度92億円の経常利益が、昨2012年度には47億円と大幅な減益となり、さらに、2013年度第1四半期は経常利益が5億円まで落ち込んでしまいました。この急激な悪化は、旧郵船航空サービス株式会社が得意とした日本出し航空貨物が激減したのに加え、新生郵船ロジスティクス株式会社が弱かったNVOCC(注)事業拡大の初期投資負担が重なったことが大きな原因でしたが、第2四半期は24億円の経常利益を達成し、大幅に改善しています。これは、日本出しの航空貨物が若干回復傾向にあるのに加え、NVOCC事業が量の拡大とともに黒字化したのが大きな理由です。インターナショナル・フォワーダーと呼ばれるためには、エア・フレート・フォワーディング、NVOCC(オーシャンフレートフォワーディング)および配送・保管・通関などのコントラクト・ロジスティクス機能のいわゆる三種の神器を備える必要があります。郵船ロジスティクス社にもその三つの機能が備わってきましたので、今後はアジアで強いコントラクト・ロジスティクスのさらなる成長をてこに、当初の予定通り旧郵船航空と旧NYKロジスティクスとの統合効果を最大限発揮し、当社グループのコアビジネスとして、さらに成長してくれるでしょう。
なお、物流業の差別化の源泉の多くはコントラクト・ロジスティクスの分野に存在します。お客さまの物流の中に3Mを見つけ出し、ITを駆使しつつ、それらをいかにカイゼン・解消するかが業務の全てといっても過言ではなく、さらなる成長のためには、このカイゼン提案力の強化が欠かせません。また、海上輸送契約確保やコスト削減のための補完的サービスの色彩の強かった、完成車のターミナルや内陸輸送などの自動車物流事業も、それ自体が収益を生むプロフィットセンターとして、今やなくてはならない存在に成長しました。
(注)NVOCC: Non-Vessel Operating Common Carrier。船舶を所有せずに国際複合輸送を取り扱う輸送業者
「3M(ムダ・ムラ・ムリ)解消による成果」
ところで、“More Than Shipping 2013”が最もフォーカスしたのは、実は船をどのように使うかというソフト面の分野でした。われわれの主戦場であるにもかかわらず、大半の船種がコモディティー化する中で、それでも競合他社との違いを発揮し、一定水準の利益を計上し続けるには、どうすればいいのか。それは、同じ船を使っても、競合他社より安全・確実に、かつ安く、モノ運びができれば可能なのです。「安全・確実」を確保するには全ての現場で、安全と確実に対し、妥協をしないことであり、「より安く」を達成するには、営業力や技術力も駆使しつつ、船をいかにムダ・ムラ・ムリなく使うかということです。一言でいえば現場力次第ということであり、そして、この現場力を左右するのは、何度も申し上げてきた通り「誠意・創意・熱意」つまりわれわれの人間力です。
船余りと高い燃料を大量に消費するという、当社グループにとって最大のムダをなくすべく、IBISプロジェクトに代表される燃節活動は最重要な日常業務として完全に定着し、大きなコスト削減を達成しています。また、その活動は、空気潤滑システムを搭載し、燃費効率が格段に改善した本船“SOYO(双洋)”に代表されるように、当社グループ技術陣が全面的にサポートしています。
燃節以外でも、ムダ・ムラ・ムリの解消で大きな成果を上げる分野が増えてきました。まず、コンテナ船の「EAGLE PROJECT」です。コンテナ1個1個を船と見立て、空コンテナ輸送の最少化と、復航で空コンテナ輸送が避けられない仕向地への往航貨物は、相応の運賃をご負担いただくというプロジェクトです。このプロジェクトを進めるためには、ITのバックアップと、関係者の3M解消への強い意志の共有が、不可欠であったことは、いうまでもありません。また、欧米市場を中心に客船事業展開しているクリスタル・クルーズ社は、最上級ランクということで、料金面で下方硬直性があったところに、リーマン・ショック、欧州の経済危機が直撃し、乗船率が低迷する航海が頻発。空室という最大のムダが急増したため、昨年度まで収支が大幅に悪化していました。この状況の打開策として、営業方針を180度転換し、早割制度と同時に、人気クルーズは予約が後になればなるほど、値段が上がるというシステムに変更したところ、乗船率、売り上げともに急回復し、本年度は黒字転換が確実な状況になっています。
さらに、余剰船を抱えるケープサイズバルカーやVLCCもアジア、新興国のパートナーとの連携がうまくいき、長期契約を積み上げ商権を確実に拡大しています。
「ブルーオーシャンを開拓」
以上、“More Than Shipping”の進捗を振り返ってきました。各部門とも本当によく頑張ってくれていると思います。ただし、これを現場で支えてくれたのが、海技者の皆さんであることを忘れてはなりません。海運業の品質の根幹である安全・確実を担保してくれているのは、海技者の皆さんの誠意・創意・熱意です。燃節・安全技術の深度化も、現場からのフィードバックがあってこそ、初めて可能となったのです。
“More Than Shipping”とは、つまりは、人間力発揮プロジェクトであったのです。皆さんに繰り返しお話ししている通り、船の大半は日本、韓国、中国で建造され、ハード部分では、もはや競合他社との差別化が難しくなっています。コモディティー化したビジネスには、安値競争を繰り広げるだけの血で血を洗うレッドオーシャンが待ち受けています。当社が採るべき道は、徹底的にムダ・ムラ・ムリを排除し、競争力を高めつつ、当社の知見・知財を生かしたカイゼン提案力に磨きをかける。そしてプラスαのサービスを提供することで差別化を図り、競合他社とは異なる土俵で勝負できるブルーオーシャンを開拓することです。
これがまさに“More Than Shipping” であったわけですが、大きな成果が挙がりつつあり、皆さんの人間力にあらためて感謝する次第です。今後とも、既成概念にとらわれない革新的な発想力、高い問題意識からくるカイゼン提案力と解決のための実行力、周囲を引き付ける対人関係力やリーダーシップを発揮するマネジメント力を磨くなど人間力をさらに高め、もっと大きなブルーオーシャンを皆で開拓していきましょう。
「結び」
本日のあいさつを終わる前に、改めて独占禁止法関連に触れさせていただきます。われわれ海運業は依然、独占禁止法の適用を受ける分野と、その適用を除外される分野とが、併存する複雑な環境で事業を行っています。しかしながら、世の中の趨勢は、適用除外の範囲が狭まる方向に向かっています。こうした状況下、世界各国の独占禁止法の内容や規制強化の動向と、独占禁止法の適用除外として許される範囲を正しく理解することが重要になっています。この状況に対応するべく独禁法遵法活動徹底委員会の設置など、あらゆる手段を講じていますが、社員各自が、当事者意識を強く持ち、独禁法遵守を心掛けなければ画竜点睛を欠く結果となってしまいます。
最後に、皆さんとご家族の、ご健康とご多幸を心より祈念して、私の新年のごあいさつといたします。
以上
掲載されている情報は、発表日現在のものです。
その後、予告なしに変更される場合がございますので、あらかじめご了承ください。
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