大気汚染及び地球温暖化防止

ビッグデータを活用し、最適経済運航“IBISプロジェクト”を全社的に推進

中期経営計画「More Than Shipping 2018 ~Stage 2 きらり技術力」で掲げる、技術力による差別化戦略の下、当社では航海中の本船の航海・機関情報などのビッグデータを活用した安全・省エネ運航に取り組んでいます。

当社グループでは、2012年度から最適経済運航「IBIS(Innovative Bunker & Idle-time Saving)プロジェクト」をコンテナ船で開始し、実航海で得られるデータ活用を含めた、幅広い燃節活動を進めてきました。さらに、IBISで得た知見やノウハウを他船種に展開すべく、それぞれの特性や条件に応じて減速運航の深度化をはかるIBIS-TWOプロジェクトを2013年度から始動し、各船種・ビジネスに合った最適効率運航を追求しています。

データ活用の基盤となっているのが、船舶の運航に伴い、実航海の現場から生まれるビッグデータを収集し、船陸間でデータを共有するSIMS(Ship Information Management System、パフォーマンスマネージメントシステム)で、2016年4月時点で150隻を超える本船に導入し、船舶のIoT推進に取り組んでいます。

各種データを表示してモニタリングするLiVEや船舶性能を解析するVPAS等のツールを開発することにより、ビッグデータを有効的に活用しています(関連特許取得にも取り組んでいます)。その事例としては、就航コンテナ船の低速運航仕様への改良につき、実海域データを用いた検証を行い、一般財団法人日本海事協会による鑑定を受けたこと等が挙げられます。

今後も、船種ごとのニーズに合わせた運航管理のインフラとして、本システムの技術改良およびデータ解析技術の向上に努め、最適な航路計画の立案、機関故障の低減・防止による修繕費用の削減やロスタイムの減少、安全確実な貨物輸送の実現などに、その活用範囲を広げていきます。

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省エネ運航にあわせたコンテナ船の船型改良工事

省エネ運航が一般的となってきているなか、建造時に想定されていた航行速度より低速域で航行する傾向にあります。当社グループではバルバスバウ※1の改造や船体付加物“MT-FAST”の設置などにより、就航済みのコンテナ船を修繕ドックで低速運航仕様に改良しました。2014年6月の改良工事実施後、半年間にわたり実航海データを取得しビッグデータの性能解析を行った結果、推定値を上回る23%ものCO2削減効果を確認しました。併せてエンジンの運転状態等、本船のコンディションの検証も併せて行い、この改良工事が安全運航に影響を及ぼさないことも確認しています。

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バルバスバウの改造
(船型や運航条件に併せてバルバスバウの形を改造)
本船に採用された以下のシステムについて、特許を出願しています。

  • ・LNG受入システム
  • ・LNG気化システム

今回、当社グループが短期間かつ効率的に運航条件に適した改造工事を検討する手法を確立した(特許出願中)ことで、今後当社グループのコンテナ運航船に対しても、この手法に基づく工事を進め、省エネ効果の向上を図っていきます。

※1 バルバスバウ
本船の喫水線下の船首部分に取り付けられた、丸く突出したバルブ状の突起物。船が進む際、波を起こすことによって受ける抵抗を打ち消す効果がある。

「エコの見える化」外航船で初めてEEOI鑑定書を取得

地球温暖化ガス排出削減の取り組みとしてIMOで議論されている運航におけるエネルギー効率改善の指標であるEEOI(Energy Efficiency Operational Indicatior)※2を算出し、燃料節減活動の一環として本船へフィードバックしています。またEEOI算出の信頼性を向上させる為、第三者機関である一般財団法人日本海事協会より鑑定を受けております。この鑑定を受けたのは外航船では当社運航船が第一号となります。

※2 EEOI
1トンの貨物を1マイル(約1.85キロ)運ぶのに実際の運航で排出されたCO2グラム数を表す。

ロングビーチ港減速航海プログラムへの参加【グリーンフラッグ】

当社は、米国ロングビーチ港港湾局が実施している減速航海プログラム「グリーンフラッグプログラム」に参加しています。

同プログラムは、船舶からの排気ガスを抑制する目的で、同港に入出港する船舶に対して、沿岸20マイル(約37キロメートル)若しくは40マイル(約74キロメートル)以内の海域において12ノット以下で航行することを推奨しています。

当社は、2009年より開始された40マイル以内での順守率においては例年90%以上を保ち、2015年度は98.08%の高遵守率を達成しています。

「泡」で省エネ『空気潤滑システム』搭載船

空気潤滑システムとは船底に空気を送り込むことによって泡を発生させ、海水との摩擦抵抗を減らす省エネ技術です。当社グループでは2010年に「ブロア(送風機)方式」による空気潤滑システムをモジュール船※3「YAMATO」と「YAMATAI」に搭載し、世界で初めての恒久的な運用を実現させました。2012年には同じく世界初の「主機掃気バイパス方式」による空気潤滑システムを開発し、当社石炭運搬船「SOYO」に搭載しました。効果としては、ブロア方式で平均約6%のCO2排出量削減が確認され、主機掃気バイパス方式では約4~8%のCO2排出量削減が期待されています。
また新たな船種への展開として2014年5月竣工の自動車専用船「ARIES LEADER」 への搭載が行われました。

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本システムを搭載したモジュール運搬船を下から見たイメージ図

なお、この空気潤滑システムは「2013年 日経地球環境技術賞」にて最優秀賞を受賞、「Lloyd's List Global Awards 2013」のファイナリストに選出されるなど、国内外で数多くの高い評価を受けています。
これまでの受賞歴は「環境受賞実績」をご参照ください。

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※3 モジュール船
石油・ガス開発サイトや工場に設置されるプラントなどを数千トン規模のプレ・ハブ構造物に分割して、海上輸送およびロール・オン/オフ方式で積揚する特殊重量物輸送。

船舶停泊中の陸上電力の利用

本船が停泊中に必要とする電力を陸上から受け入れ、船内発電機の運転を抑えることで、CO2やNOx、SOxなどの大気汚染物質の排出量を低減することができます。2007年11月、当社運航船の“NYK Atlas”がロサンゼルス港のYusen Terminals社にて、初めて陸上からの本格的な電源供給を受けました。その後、全ての大型コンテナ船に対して陸電受電装置の導入を開始しました。2012年10月には、同じく当社運航船の“NYK APOLLO”が、米カリフォルニア州オークランド港のコンテナターミナルにて陸上からの本格的な電源供給を受け、邦船社としては同港で初めて本格受電に成功しました。今後も、当社コンテナ船隊の受電装置改造工事を進め、順次、停泊時の陸電供給によるオペレーションを拡大していきます。

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Oakland港にて陸電供給中のNYK APOLLO

プロペラの推進効率の向上【MT-FAST】

波や風の抵抗が少なくなれば少ないほど、省エネルギー運航が可能となります。そこで、少しでも省エネを実現しようと、船体に取り付けることで抵抗を軽減させる、さまざまな船体付加物が考え出されています。(株)MTIが常石造船(株)と共同開発した推進援助装置・MT-FASTもそのひとつです。航海中の水面下では、プロペラの回転から生まれる旋回流により、推進力が損なわれる現象が起きてしまいますが、船体に翼をつけることで、損失推進力の回収効果が実証され、約4~6%の省エネ効果が確認されました(特許取得)。引き続き、回収効果の高い仕組みを研究しています。

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MT-FAST

燃料の噴射量を調節【ガバナー】

舶用主機は、絶えず変化する海象のもとで、船のスピード(プロペラ回転数)を維持するために、ガバナーという装置で燃料噴射量を調節しています(関連特許取得済)。

改良したガバナーは噴射量調整の動きを緩慢にすることで、省エネ効果を得られますが、コンテナ船および自動車運搬船における効果検証において、従来に比べて約1.3%の省エネ効果が確認されました。本技術は2010年より当社が運航する船には積極的に搭載されています。

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新ガバナーコントーラー

効果的なエンジンの廃熱利用【排ガスエコノマイザー】

ほとんどの大型船はエンジンから発生する廃熱を利用して発生させた蒸気でターボ発電機を回し、航海中に使用する電気を賄う、排ガスエコノマイザーを搭載しています。これにより、航海中に発電のためだけに使用していた燃料を使う必要がなくなりました。
比較的小型の船にはターボ発電機を搭載していない船もありますが、その場合には蒸気を燃料油の加熱や調理・給湯用として活用しています。

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燃料の有効利用の促進【燃料油添加剤の活用】

燃料油に添加剤を加えることで、さまざまな効果がもたらされます。エンジントラブルの防止、汚損、腐食防止、排ガス浄化の効果に加え、燃費節減に役立ちます。通常は燃料中にスラッジ成分※4が含まれており、分散していますが、安静下では、保存中にタンク底などに堆積していきます。添加剤を投入する事によりスラッジ成分の堆積を防止し、分散したままの状態とし、スラッジ成分を効果的にエンジンで燃焼することが出来るため、燃費が節減されます。当社グループ会社の日本油化工業(株)が製造する生成スラッジ抑制剤「ユニック555D」の効果検証では、1.5%以上の燃費改善がみられ、現在当社グループのほぼ全運航船での積極的な導入をしています。これにより、CO2排出や、煤塵を押さえることによって、大気汚染物質の削減に寄与しています。

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添加剤の成分がスラッジ成分を包み込んで固まるのを抑制するイメージ図です。
分散補助物がなくなるとアスファルテンが凝集して沈殿します。
助燃剤には分散補助物の代わりになる成分が含まれており、アスファルテンの沈殿を防止します。

※4 スラッジ成分
油中に溶け込まない、半固体粒子のこと。析出するとどろどろのアスファルトのような液体(半固体)になる。

燃料油添加剤開発を通じた環境規制への対応 日本油化工業(株)

2014年11月、日本油化工業(株)は低硫黄軽油※5用の燃料油添加剤「Yunic750LS-F」(特許・商標登録出願中)を新開発しました。2015年以降、硫黄酸化物規制※6が一段と強化され、規制海域での低硫黄軽油の使用拡大が見込まれる中、本製品は一層大きな役割を果たすことが期待されています。本製品の特性としては次の3点が挙げられます。

  1. 燃料油の潤滑性を向上させ、燃料油系機器のトラブル(異常摩擦やこう着)を防止
  2. 規制海域外では使用されない為、長期保管されやすい低硫黄燃料油のカビ発生を防止
  3. 潤滑性向上と防カビ対策の両機能を有するため、本船乗組員にとって取り扱いが容易

日本油化工業(株)を含む当社グループは、環境規制を遵守し環境保全のための研究開発に積極的に取り組んでいます。

※5 軽油
燃料油は成分により分類され、船舶で使用されている燃料油には、C重油、A重油(Marine Diesel Oil)、軽油(Marine Gas Oil)などがある。その中でも軽油は最も品質が良い。
※6 硫黄酸化物排出規制
船舶からの排気ガスに含まれる大気汚染物質の排出を削減するために、国際的な規制が設けられている。2015年1月1日より、欧州および北米などの大気汚染物質排出規制海域(ECA:Emission Control Area)における燃料油中の硫黄含有量の制限値が現在の1.0%から0.1%に引き下げられる。

船底付着物の除去による推進効率の改善

船体やプロペラに付着する海藻や貝殻などで推進抵抗が増し、燃料消費量の増加を招きます。船底には、付着を防ぐための塗料を塗布しますが、一定期間を過ぎると付着が始まってしまいます。定期的にダイバーにより海中の船体汚損状況や船底塗装状況を点検し、最適な時期にアンダー・ウォーター・クリーニング(UWC)で、海中で船底の付着物を除去したり、プロペラ研磨を実施しています。UWCにより約10%、プロペラ研磨で1~2%の燃料油消費改善がみられ、このような船体のメンテナンスに積極的に取り組んでいます。

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